Dolce | ナノ


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「「攘夷志士ぃ?!!」」


銀時と感動的な再会を果たした私は万事屋のソファに座り、向かいに座る従業員らしい新八くんと神楽ちゃんに詰め寄られていた。その様子を銀時は何故か満足げに見つめている。


「攘夷四天王っつーのは表向き。本当はもう一人居たんだよ。んでそれがこいつ。修羅の華、なんて呼ばれてたもんな」

「まさか女の人まで攘夷戦争に出ていたなんて…知りませんでした」

「何で突然現れたアルか?」

「…こいつは天人の捕虜にとられたんだ。とっくに死んでたと思ってたよ」

「こっちのセリフだよ!命からがら逃げ出したっていうのに、そうこうしてるうちに攘夷戦争は終わったって聞かされて。…だから銀時たちも死んだと思ってた。みんなのお墓作ったんだから」

「勝手に殺すんじゃねェ!」


銀時の言う通り私は元攘夷志士。銀時たちと共に先陣切って天人に立ち向かっていた一人だ。私は戦いの最中天人に捕虜に取られてしまった。圧倒的な数の差に仲間の死を怒れた私は、助けを拒み捕虜に取られることを選んだ。そして敵のアジトまで連れていかれて、そこを命からがら殲滅させたというのに。方向音痴の私は銀時たちと合流することができずに、あっちこっちの田舎にお世話になっているうちに、攘夷戦争は終焉を迎えたのだ。…修羅の華なんて呼ばれていたのは、とっくに昔の話。今はただの浮浪者だ。


「小太郎や晋助は?みんなも無事なの?!」

「あァ、ヅラもアイツも、まぁ無事っちゃ無事だ」

「本当…よかった」


思わず涙ぐんでしまった私の空気を察してか、新八くんと神楽ちゃんは出かけてくると大きな犬?怪獣?を引き連れて出て行ってしまった。気を使わせてしまって申し訳ない。私は素直にその気持ちを受け取った。


「…ねぇ、銀時」

「あ?」

「……松陽先生は?」


言いづらそうに銀時は当時のことをポツリポツリと語ってくれた。私が捕虜として捕まったあとに松陽先生に会ったこと。そして松陽先生を殺したこと。そのあとすぐに戦争が終わって、みんなとは解散したこと。そして今も小太郎や晋助は攘夷活動をしていること。晋助とは仲違いしていること。そして銀時はこの町で万事屋を営み始めたこと。全てを聞かされた頃には、私は一箱分のティッシュを使い果たしていた。


「…んな泣くなよ」

「だって、だって…」


私と銀時、そして小太郎と晋助は同じ寺小屋で幼少期を過ごしてきた。そこで私たちを見てくれていたのが、吉田松陽先生。私たちは松陽先生を慕っていたし、松陽先生も私たちを可愛がってくれていた。あんなに松陽先生を慕っていた銀時が、その師を…松陽先生を殺めなければならなかったなんて。そんな酷い仕打ちがあるもんか。


「…許せない。やっぱり私は幕府が許せないよ…っ!私も、小太郎たちと…」

「…やめとけ。もういいだろ?俺は全て失ったわけじゃなかったんだ」


怒りで震える私の元にやってきた銀時は、徐に私を抱き寄せた。


「お前が生きてた、それだけで十分なんだからよ」

「…銀時…っ」


私たちはみんなが思うような関係にあるわけじゃない。互いの気持ちを言葉にしたことなんてない。それでも私は銀時が好きだったし、銀時も私を好きだったように思う。だけど、あの当時はそんな恋沙汰に浮かれている時ではなかった。惚れた腫れたなんて言うよりも、私たちにはしなければならないことがあったのだから。


「お前、行くとこねェんだろ?しばらくうち住めば?」


私の長い黒髪をサラサラと撫でながら、そんなことを言い放つ銀時に、私の胸はドキンと高鳴った。攘夷戦争に明け暮れたあの頃とは、もう違う。私はもしかしたら、ただの女の子になれるのかもしれない。そんな期待を胸に、静かに銀時の腕の中で頷いた。





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