Ichika -carré- | ナノ


▼ 呆れるアイツ 1/2




「どうしたんじゃ、顔色が悪いぞ」


昨夜、あれから私は気持ちを紛らわすために家にあるだけの酒を飲み干し眠りについた。紛れもないヤケ酒。そんな日の目覚めがいいわけもなく、血色は悪くクマもすごい私の顔を見て、月詠は心配半分ドン引き半分といった顔を向けてきた。


「ちょっとね…あー気持ち悪っ」

「ぬし…また飲んで寝たのか?ほどほどにしなんし。飲み過ぎは身体に毒だぞ」

「うぅ、大きい声出さないで、頭痛い…」

「出してないだろうが…まったく」


頭の中で小人が工事をしているのかと思うくらい、ガツンガツンと響いて痛い。体調が悪いのももちろんだが、何だか今日は元気が出ない。月詠と見廻りをしていても、無意識に視線が地面に落ちてしまう。いよいよ月詠は本格的に心配し始めたようで、見廻りを中断してひのやへ向かうことになった。



「何、銀さんと喧嘩でもしたの?」

「…んー、いや、喧嘩っていうか」

「言ってみなんし」


日輪と月詠に詰め寄られ、私は昨夜の出来事をかくかくしかじかと説明した。(月詠の顔色を伺っていたが特に変化はなし。それがまた心苦しい…)全部聞き終えた日輪と月詠は互いに顔を合わせ、はぁっとため息をついた。


「なまえ、単刀直入に言うわね」

「ぬしが悪い。しかも全面的にじゃ」

「…やっぱり?さすがの私も少し反省したよ。男を家に連れ込むもんじゃないなって」

「そこじゃありんせん!!!」

「なまえ、あんたって子は、何ていうか、本当に…」


「バカだね」「バカじゃな」と口を合わせてまたもやため息をつく二人に私は眉を顰めた。バカって、ハモらせなくったっていいじゃんか。


「わかってるよ、写真でしょ!私だってわざとじゃないんだってば」

「何でそんなもの大事に取って置いてるのよ」

「大事になんてしてないよ!取って置いたつもりもない!捨て忘れたっていうか」

「そういう類を極端に嫌うものもいるんじゃ、銀時はそういうタイプの男なんじゃろう。ぬしもつくづく間の悪い女じゃな」

「…だからってあんな明からさまに怒んなくたっていいじゃんか…」


口を尖らせた私を日輪は面白そうな顔で微笑んでいる。それにつられて月詠も口元を緩ませた。私はその笑顔の意味を理解した瞬間、二日酔いも吹き飛ぶほど勢いよく立ち上がった。


「って何私落ち込んでんだ!意味わかんねー!さっ、月詠!仕事戻るよ!!ほら、早く!!」


くすくすと「素直じゃないわねぇ」なんて笑われているが、もはや聞こえないフリだ。ボリボリと頭を掻き毟って私は心を落ち着かせた。何で私が銀時如きにこんなに一喜一憂しなきゃなんねーんだ、ふざけんな!ないない、銀時なんてない!ありえない!いつまでもニヤニヤしたまま腰を上げない月詠の手を引っ張って、私たちはひのやを後にした。



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