Ichika -carré- | ナノ


▼ 甘い香りに乱るアイツ 愛乱香篇☆ 1/



もう、何もわからない。


「…っ、…も、ぃやぁ…!!は、ぁあッ、助けて、もぉダメ、銀時ぃ、銀時…!もうダメ…ッ!!」

「…散々イッてたくせに、…ッ、今さらどの口が言うんだよ、なァ、…こっち向けよ、なまえ…っ」


何度も何度も私を襲う真っ白な波は、何度私を飲み込んでも引くことを知らない。


「あ、あぁっ…!ぃやあぁあっ!あっ、また、またイッちゃう、やだぁ…ッ!もう、やぁあッ……!!!!!」


私は本当におかしくなってしまうかもしれない。




・・・・・



時を遡ること数時間前。
江戸はかぶき町、吉原と同様眠らぬ町と言われるこの町にある一軒の怪しげな店…というのか事務所というのか、はたまたヘンテコな組み合わせの同居部屋というべきか。色んな表現の仕方のあるここは、万事屋銀ちゃんの看板を置く文字通り何でも屋。


「ごちそうさまでしたー!」


ぱん、と手を合わせて夕飯のチャーハンを完食した私を横に座る男がジト目で睨みつけた。この男こそがこの怪し気な万事屋の主、そして私の彼氏、坂田銀時その男だ。眉をあげて首をかしげる私に銀時はくわっと詰め寄った。


「え、何?美味しかったよ」

「そーじゃねェよ!何で俺お前に手料理ふるまってんのォ!?」

「いいじゃん、お前が作った方がうまいんだから」

「普通彼氏んち来たら手料理振る舞うのが彼女ってもんだろうが!料理本片手に四苦八苦しながら作るのが彼女の鑑だろうが!!!」

「細けー男だな、美味しかったんだからいーじゃん」

「俺は可愛い彼女の作るメシが食いてェのー!…可愛くねェけど」

「一言余計なんだよ!」


どびしっと音を立てて銀時の額にチョップを入れれば、大袈裟に痛がる銀時に自然と頬が緩んだ。今日は家事担当の新八がいないどころか、神楽と定春の姿もない。聞けば妙が職場で温泉の旅券をもらったそうで。それも4枚しかなくて妙、九兵衛、神楽、新八の四人で行くことになったそうで。銀時は仲間外れだなんだって騒いでたけど、神楽がこそっと『姉御がたまには二人でゆっくりさせてあげなさいって言ってたアル』と事の真相を教えてくれた。…とは言え、別にいつも吉原に足を運んでいるのだから今更そんな気を回されても逆にこそばゆくなってしまう。


「風呂、一緒に入んだろ?」

「…んー、嫌だって言ってもお前絶対入ってくんじゃん」

「んじゃたまには一人で入る?」

「え?いいの?」

「そりゃおめー、仮にもお客さんだからな」


私の後頭部に手を伸ばし、サラッと髪の毛を撫でる銀時を見つめ返して私は眉を上げた。なんだこいつ、珍しく聞き分けがいいじゃないの。お客さん、だなんてそんな対応された事は今の一度もないし、やっぱり何だかこそばゆい。その手を躱すように立ち上がりぽんっと銀時の頭に手を乗せて「んじゃお先」と一言添えれば緩く口角の上がる銀時に同じように微笑み返した。…本当に何気ないやりとりだったのだ。今思えば、怪しさしかない態度だったというのに。銀時の思惑に気付くわけもなく、私は風呂場へと向かった。


-------



「あー、久々の広い風呂ー」


ちゃぷんと音を立てて湯船に浸かりながら、身に染みる熱湯を堪能しながら全身を脱力させた。不意に棚に置かれた男物の洗顔や髭剃りが目に入り無意識に頬が緩む。万事屋で風呂を借りるのは初めてのことじゃないが、そう何度もあることでもない。それ故この家にいて感じる銀時の生活感に何とも言えない愛しさが心の中に広がる。…私の知らない銀時はまだたくさんあるんだろうな。たくさんの表情を見てきたつもりだけど、それでも知らないこともたくさんあるんだろうなぁ。


「…ふぅ」


何となく銀時の顔を見たくなった私は、たまにはたくさん甘えようかな、なんて柄にもないことを思い軽く鼻歌を鳴らしながら早々と湯船をあがった。この後私を待つ悲劇を知る由もなく。




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