Ichika -carré- | ナノ


▼ 天パのアイツはヒゲヅラのアイツ? 1/2



「…ちょっと近いんだけど」

「そう?」


結局全蔵(銀時)を部屋に連れ帰り軽食を済ませた私は、普段通りの距離で私にもたれながらゲームのコントローラー片手にテレビに食い入る全蔵(銀時)を咎めた。土方の時同様に見た目は全蔵だが、中身は銀時なのだ。そんなことは百も承知なのだが、やはり人の脳というのは視覚で感じ取る情報が最優先で処理される。見えぬ魂など到底それに叶うはずもなく。


「ねぇ私日輪のとこ行くから、お前ここで一晩泊まれば?」

「そりゃないんじゃねーの!いくら見た目がイボ痔忍者だからとはいえ中身が銀さんなんだからいいだろーが」

「うぜェ!マジで全蔵と喋ってるみたいでうぜェ!」

「本当なんでよりにもよってアイツなんだよなァ。あのヤロー俺の身体で変なことしてねーかな」


ブツブツと呟きながら、なァ?と私に顔を向ける全蔵(銀時)に私はどういう気持ちを持って接すればいいのかわからなくなっていた。普段全蔵に接するような対応をすればいいのか、逆に銀時に接するような対応をすればいいのか。そもそも何だよ、魂が入れ替わるって。何でそんな滅多なことが立て続けに起こるんだよ。はぁっと大きくため息をついて立ち上がり、押入れから二つ布団を取り出した私をいつかのように全蔵(銀時)が声を上げた。


「オイ!なんで布団二つ出してんだよ!いいだろーが一つで!」

「嫌だ!全蔵と寝るみたいじゃん!すげー複雑だから嫌だ!」

「俺だって嫌だけどしょうがねーだろーが!土方のヤローと比べたらこいつの身体なら寝慣れてんだろ!?」

「人を尻軽みてーに言うな!何が悲しくて彼氏の魂が入った元カレの身体と一緒に寝なきゃなんねーんだ!」

「…あ、わかった。いいこと思いついたわ、俺」

「…は?」


いそいそと布団を敷く私を尻目に、パチンと照明を落とした全蔵(銀時)に私は何事かと辺りを見回す。テレビの灯りが照らす中、全蔵(銀時)の姿が見つからない。銀時、と声を上げかけた時突然私の視界は真っ暗闇に包まれた。


「これなら大丈夫だろ?」

「何してんだお前」

「目隠ししてりゃわかんねーじゃん?」


突然暗くなった視界は全蔵(銀時)が何か帯のようなものを私の目元に巻いたからだと理解するなり、私は頭が痛くなった。こいつバカだろ、問題は視覚だけじゃねーんだよ!聴覚にも問題があるんだよ!


「オイ、お前バカだろ!?見た目だけじゃなくって声も全蔵なの!そんなことも忘れたの!?」

「わーってるってー。だから、耳も聞こえなくすりゃいーんだろ?」

「は」


その言葉を最後にごそっと耳元を弄られて何か耳の中に違和感を感じた。全蔵(銀時)の声が聞こえてこないところを見ると、これは耳栓ですね。耳栓を入れたんですね。なるほど準備がいいね、銀時くん。…じゃねェだろ!


「ちょ、…銀時…」


そう、言葉にできていたと思う。何分自分の声すらも聞こえない不能になった耳、そして闇に包まれた視界では全蔵(銀時)の気配すらも感じ取ることができない。そうして次の瞬間布団に押し倒された私は、次に自分を襲うであろう出来事を想定して大きく拒絶するように私の上に覆い被さっているであろう全蔵(銀時)の胸元をぐいっと押し返す。が、叶うわけもない。

ぐっとアゴを抑えたかと思えば、私の唇は全蔵(銀時)の唇に包み込まれた。こんなときに何サカってんだこのバカ!必死に抵抗する私に構うことなく、ねっとりと口内を這う舌の動きは私の知っている銀時のそれで。だけど口元に触れるヒゲがこの身体は銀時のものではないとすぐに私の思考に訂正に入る。


「ん…っ」


徐々に混乱しだす私の思考は、この行為を受け入れるべきか否か葛藤していた。このキスは紛れもなく銀時のもの。だが、この身体も紛れもなく全蔵のもの。何が正しくて何が間違っているのかがわからない。そうこうしているうちに全蔵(銀時)の指が私の胸元を弄り出した。少しだけ高い体温の指が寝間着の帯を解いて、直接私の膨らみに触れて図らずも吐息を漏らしてしまった。唇から離れたであろう全蔵(銀時)が何か言っているような気がするが、耳栓を突っ込まれているせいで聞き取れない。全蔵(銀時)は首元に舌を這わせながら徐々に胸元に降りていくのを感じて、私はその肩を押し返そうと必死に抵抗してみせるも、やめてくれる気配はない。私は未だ困り果てている脳内で結論を出さずにいた。

…私に触れているのは銀時で、でもその身体は全蔵で。その指も舌も動作を指示しているのは銀時で、でもその指も舌も全蔵のもので。

…素直に受け入れるべきなのか、それとも…。




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