Ichika -carré- | ナノ


▼ 泥酔するアイツ 1/3 side坂田銀時



予期せぬ事件っつーのは突然起きるもんだ。


すっかり夜も更け込んだ吉原で、俺は一人なまえの長屋でゲームをしながらゴロゴロしていた。当の家主は年に一度の各店の大型見廻りだかなんだかで留守を俺に任せて夕方に出て行ってしまった。何でも不正を働いている遊女がいないかとか、売れっ子遊女の不満を聞いたりだとか、今日の職務はそういったことがメインらしい。「少し飲んでくるから」とかなんとか言っていたから、仕事と言う名の飲み歩きみてーなモンだと勝手に解釈をしている。いーなァ、俺も売れっ子遊女に酌されてーなァ、なんて言ったら殴られたのはここだけの話。


「……あー、暇だ」


いくらゲームやテレビがあるからと言って、俺はそんなことをしにこの家に来たわけじゃねェ。早くなまえとゴロゴロしてーよ。あんなことやこんなこと、俺もアイツの身体の隅々まで見廻りしてーよォ。なんて思っていれば、思いが通じたのか玄関先からガタン、と音が聞こえた。…やっと帰って来やがった。嬉しさを隠さずにガバッと起き上がり玄関の方へと顔を向ければ、聞こえてきた愛しの彼女の、…声?


「たらいまぁ〜〜〜っ!!!」


「…えっ?」


聞き慣れた声ではあるが、何だか違和感を感じた。音を立てて襖が開いたと思えば、間違いなくなまえがそこに立っていた。だが、その顔は真っ赤に茹で上がっている。


「銀時ぃ〜!たらいまぁ〜!お留守番ありがとねぇ〜」

「え、…うん、おかえり…ってあれ?なまえちゃん?…なんかあった?」

「ん〜銀時ぃ〜」


どたどたと音を立てて俺に駆け寄ってきたかと思えば、がばっと俺に抱きついたなまえを受け止めると鼻いっぱいに広がる強いアルコール臭。


「うわ、お前酒クサッ!!!」

「ん〜?そぉ〜?全然飲んでないよ〜」

「嘘つけ!めちゃめちゃ酔っ払ってんじゃねーか!仕事とはいえそんなんなるほど飲むやつがあるかよ」

「だってぇ、飲んでってくらさーいって言うから、つい飲んじゃったぁ〜、アハハ」

「アハハ、じゃねーよバカ、飲み過ぎ!キャラ変わってんだろーが…」

「銀時ぃ〜」

「って人の話聞けェェェ!!!」


俺の胸にぐりぐりと頭を擦り付けていたなまえは、不意に手を伸ばして俺の両頬をがっちりと掴まえた。何だよ、と出かけた言葉を遮るように俺の唇は熱いなまえの唇に塞がれた。突然のことにされるがままにその行為を許せば、熱くねっとりとしたなまえの舌が俺の口内を犯している。…何この子、酒強いんじゃなかったの?限界突破するとこんなんなっちゃうの?!こんなに積極的ななまえなんて知らない!どうしようちょっと嬉しい!つーか可愛いんですけど!


「…ん、はぁ…」


ちゅっと音を立ててようやく俺の唇から離れたなまえの瞳が、酔いのせいでうるうると湿っている。その瞳から目をそらすことができずに見つめていると、なまえは小さく首を傾げて柔らかく笑った。


「ねぇ、銀時。好きだよ…」

「…もう何なの。可愛すぎんだろ、つーかマジでキャラ変わりすぎだろ…」

「…なんで、ダメ?銀時、なまえのこと嫌い?」


酒を飲むと本性が出るっつーがこいつは何、これが本性なの?普段のアッチの方が作ってるキャラなの?だとしたらこいつキャラ設定完全にしくじってない?絶対こっちの方がマトモじゃない?つーか自分のことなまえって!何それ、そんなこと言う子なの、本当は。何も言わない俺に不安そうな瞳を向けるなまえは、今度は思い切り俺を押し倒した。マジっすか、なまえちゃん!!!!


「…銀時ぃ」

「人のことそんな甘ったるく呼ぶのやめてくんない?色々込み上がってくるから、爆発しちゃうから銀さん」

「何がぁ?ねぇ、何が爆発しちゃうのぉ」


嬉しそうに笑いながら俺に覆い被さるなまえは、どこか挑戦的で楽しげで。そんななまえを見上げれば、少し浮かんでいた罪悪感が消えかかる。さすがにこんな状態のなまえを抱くのは普段のなまえに悪いっつーか、なんつーか。



「…ねぇ、銀時。爆発、させてよ…」


眉を下げるなまえの色っぽい声に表情に、俺は浮かんでいた罪悪感を消し去ってなまえの後頭部を抱えて唇を奪った。

…自分の好きな女のこんな表情にこんな声に、我慢しろっつー方が無理な話だ。



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