▼ やっぱり♀は私で♂はアイツ 1/3
漆黒の闇に包まれたかぶき町。ビルの屋上から町を見下ろしていると、不意に鳴り響いた私の携帯に吉報が届いた。
『わかったぞ!デコボッコ教が次に標的にする星が!』
「なんだって?銀子♀、その情報は確かか?」
『間違いねェ。律儀にテメーのサイトのブログに「現在クリス星に向かってます」って更新してやがる!』
「わかった。百華♂やまん選組♀はこっちに任せろ。お前は他の奴らを」
返事も聞かずに携帯を閉じた私は、すぐ隣で聞いていた月雄♂に目配せをした。安堵したようなその表情に、こちらも自然と笑みがこぼれる。
「やっとだね」
「本当じゃな。もういい加減この見た目、男口調にも限界が来ていたところじゃ」
「オイ、お前ら!元に戻れんぞー!」
百華♂にそう声をかけると一瞬驚いた顔をして、すぐにその表情から笑顔が溢れた。互いの手を取り合い「やっと戻れる!」「嬉しい!」と口を揃えて喜びを露わにするそれを見て、私と月雄♂は苦笑いを浮かべた。どっからどーみてもヤ●ザの男たちがキャッキャしている姿は見るに耐えない。だがそれと同時に嫌な顔せずにこの状況を受け入れていた百華♂の団員たちに申し訳なさを感じた。ずっと我慢させていたのだと。
「ミニスカポリスの連中にも伝えてきてやって。まん選組♀がちん選組♂に戻れるってな」
「副頭、ちんじゃないですよ」
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「つーわけで、まん選組♀!よかったなー男に戻れるぞー。]子♀は人間に戻れるぞー」
「誰が豚だよ!!!!」
ミニスカポリスで働くX子♀やゴリ子♀率いるまん選組♀に、総子太夫♀に変態アドバイザー猿飛♂を集めた私たちは銀子♀に指定された場所へと向かっていた。何だかんだで楽しんでいたのか、まん選組♀のやつらは心なしか残念そうにしている。特に総子太夫♀。
「どーせならもっと稼いどきゃよかったなァ、ねぇ百華のアニキ」
「総子♀は天職だったからな。安心しな、稼いだ分はちゃんと支払うからよ」
「オイテメー、俺にも払ってくれるんだろうな!?あの変態忍者結構通ってたもんな!?」
「アニキ、その金で焼肉でも食いやしょう」
「そーだな、全部終わったらパーっとな」
「何がパーっとだ!?俺の金だろーがァ!!!」
うるさい]子をシカトして、銀子♀との約束の場所に辿り着けば、その場には十兵衛♂や曹操の元へ行ったはずの神楽惇♂、赤・兎馬春に新八の姿があった。十兵衛♂の姿を見つけた月雄♂は駆け寄って本当にいいのか、と心配そうに声をかけている。私は手招きする銀子♀の元へと駆け寄った。
「なまえ♂、これで全員揃ったか?」
「うん。そっちは?」
「こっちもこれで全員だ。よし、ターミナル行くか」
「待って銀子♀!」
ん?と振り返る銀子♀の横に並び、私は例によって絶妙な斜め45度に携帯をかざした。行動の意味を理解したのか、銀子♀もすかさず絶妙な角度でキメ顔を作り、すぐさまシャッターを押した。と同時に勢いよく]子♀が私たちに飛び蹴りをした。…あんな体型なのに動きが機敏すぎる!さすが豚!
「誰が豚だ!つーかテメーらこんな時に何仲良く写真なんか撮ってんだよ!」
「もぉ〜]子ったら、ブヒブヒうるさいわねぇ。記念よ、記念!ね、なまえ♂!」
「安心しな、お前の写真もたくさん撮っといたから。何かしたらすぐバラまくぞ」
「ふっざけんじゃねェよ!何勝手に盗撮してんだ!テメー戻ったら絶対ェ逮捕してやるからな!」
「アニキ、その写真俺にもくだせェ」
「やめて、こいつにその写真渡すのだけはやめて」
またもやうるさい]子♀をシカトして私たちはターミナルに向かった。ゴリ子♀は道中何度も自分の胸を覗き込んでいるし、]子♀は総子♀に絡んでブヒブヒ言ってるし。猿飛♂はしきりに銀子♀にボンテージのビスチェを着るよう懇願しているし、月雄♂と十兵衛♂は何かしゃべってるし、神楽惇♂はまだ「曹操!」とか何とか言ってるし。新八は、新八は………アレ、新八?何で新八がここに?
「…新八、お前何でここにいるんだ?このまま向こう行ったらお前女になっちまうじゃねーか」
「なまえ♂さん、…これ」
少し恥ずかしそうに俯いた新八が指をさした先は、メガネの柄の部分。よくよくその部分を見て見れば柄の色がピンク色になっている。………。
「……」
私は新八をシカトして先を急いだ。
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