▼ 悪影響なアイツ 1/3 ☆
「帰ったぞー」
「お邪魔しまーす」
玄関に上がり声をかけたものの、普段だったらいの一番にかけてくる神楽の姿がない。ついでに言えば新八も定春もいない。今日は定春もふもふしたかったんだけどなぁ。
「あれ、いねェや、散歩かな」
私と同じことを思ったのか、銀時はチラリと時計を見上げてキョロキョロと部屋を見回した。そして今度はソファに座る私に視線を送ると、ニヤッと笑みを浮かべた。いそいそと私の横に座り込み、斜め下から無駄に子犬のような顔で私の顔を覗い込んだ。
「なまえちゃん」
「嫌な予感がする」
「銀さんちょっと眠くなってきたなァ、ちょっと布団とかでゴロゴロしたいなァ」
「どーぞ。私テレビ見てるんで、ゴロゴロしてきてください」
「っせー!早くしねーとガキ共帰ってきちまうだろ!」
ぐわっと私の腕を掴み勢いよく立ち上がらせると、バタバタと寝室へと連れ込んだ。いつになく忙しない様子で布団を敷き終えると、すかさず布団に飛び込み、ポンポンと布団を叩いて私を招いている。
「子供たち帰ってくんのに何言ってんだ!バカだろ、お前バカだろ!」
「だから早くしろって!時間かけねーから!もう銀さんの銀さんが我慢できねーっつってんの!!!」
「もー銀時、お前死ねば!」
バンバンバン!と先ほどより強く布団を叩く銀時に肩を落としながらも、言われるがままに布団に寝転がる私も、きっとバカなんだろう。神楽たちが帰ってこないことを祈りながら、嬉しそうに微笑む銀時の首元に顔を埋めた。ゴロンと私を仰向けにさせて、そのまま私に覆いかぶさって包み込むように唇を重ねた。熱くてザラザラした銀時の舌が、私の口内を暴れ回るたび、鼻から随分と艶っぽい声が漏れる。窓から差し込む日の光が、とてつもない背徳感を生む。ほんと昼間っから何してんだろう。
「…っん」
帯も解かず襟元を無理やり開き、露わになる膨らみをひと撫でされるとまた高く声が上がる。絶えず銀時の舌に絡め取られた自身の舌が、うまく使えずだらしなく息が漏れる。せっかちな指は、膨らみを二、三度揉みしだいたかと思えばすぐに硬くなり始めた頂を摘んだ。離れた銀時の口元はまたもやいやらしく上がっている。
「なァ、多分…ってか絶対さァ」
「…なに、」
「濡れてんでしょ?」
私の返事を待たずして、布団に潜り込んだ銀時は否応なしに私の脚を思い切り開脚させた。咄嗟に銀時の腕を掴んで抵抗するも、こういう時の男の力には本当に敵わない。銀時は下腹部へ顔を埋め、下着の上から形状に沿うように舌を這わした。
「…ちょ、やだっ…あっ」
「すんげーやらしー匂いする」
薄い布越しに銀時の温かい舌が上下するたび、もどかしい感覚に身体が震える。湿った吐息がくすぐったくて、先ほどまでの拒絶はどこへやら、期待に胸が苦しくなる。下着を剥がされれば、露わになる秘部。いくら布団の中とはいえ、恥ずかしさに顔を覆った。
「はっ、エロいねー、こんな真昼間っから何してんの奥さん」
「誰のせいで…あ、あっ!」
湿ったそこを舐めとるようにゆっくりと銀時の舌が這う。準備運動もなしに襲い来る刺激に私は下唇を噛み締めた。腫れた蕾を舌でねぶられれば、開かれた太ももがガクガクと震えだした。
「や、あッ!ぁああ…ぎん、…ダメッ、ぃああ!」
「…んー?」
私の太ももを抱え込む銀時の腕を力任せに握っても、微動だにしない。わざとらしく蜜を啜る音を響かせて、私の反応を楽しんでいる銀時は、次の瞬間蕾に甘く歯を立てた。
「…やっ、あ、…ぁああぁあッ!!」
容易に舌で達せられた私は、びくんびくんと身体を痙攣させて自身に襲う余韻に荒く呼吸をした。銀時は再び私に覆いかぶさり、濡れた口元を拭って妖艶に笑って見せた。
「こんな真昼間からアンアン喘いで、とんだ淫乱女だな」
「…っだって、銀時が…」
自身の着流しを捲り上げていた銀時がインナーのズボンに手をかけた時。恐れていた事態が起こってしまった。
「ただいまアルー!!」
玄関の方から聞こえてきた声に、私たちは顔を合わせた。銀時は「…マジかよ」と怒り半分悲しみ半分といった表情で呟いて布団に包まり、私もすぐさま着物を整え促されるまま銀時の腕枕に頭を預けた。
「アレ、銀ちゃんの靴あるネ!なまえも来てるアルか?!」
「ちょ、神楽ちゃん!」
ドタバタと忙しない音を立てながら、スパンと寝室の戸を開けたであろう神楽は、狸寝入りをする私たちに気付くことなく「寝てるアル」と呟いてまたすぐに戸を閉めた。
「神楽ちゃん、断りもなく勝手に寝室開けたらダメでしょ!なまえさんが来てるなら余計に!」
「何でアルか?何でなまえが来てたらダメアルか?!何でアルか!?!」
「うっ…いや、それは…」
居間の方から新八のたじろぐ声がして、私たちは布団の中で顔を合わせてクスクスと笑った。銀時は薄眼を開けて私の耳元に口元を寄せた。
「(…何この生殺し?)」
「(…だから言ったじゃん、バカ)」
「(…入れてねーのにもう出そうなんだけど)」
「(…死ねば)」
コソコソと小声で囁き合いながら、何もできずに寝たふりをしていたはずが、気が付けばどちらからともなく寝息を立てて寝てしまっていた。
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