▼ 羊の皮を被った悪魔はアイツ 1/3 ☆
どちらからともなく、私たちは唇を合わせた。銀時の大きな手が私の頬を捉えて離さない。今まで溜まっていた何かを爆発させるように、互いの唇を激しく啄ばみ合った。歯列を舌でなぞられ、背筋がぞくぞくする。乱暴なようで柔らかいその舌に、自身の舌を絡ませると、口内で互いの唾液が交わり合った。銀時の肩に手を当てると、私の頬を捉えていた手に力が入った。
「…っ、ふ、…んっ」
重ねた唇から吐息が漏れるたび、私の体温が上昇していくのを感じた。銀時の手が寝間着の帯を解いたところで、私は慌てて唇から離れて待ったをかけた。
「…待っ、」
「今度は何、今更生理とか言うなよ」
「ちが…服、脱ぎたくない」
「はぁ?」
「身体、傷だらけだから…見られたくないの、だから」
「…背中のこと?」
…何だ、知ってるんじゃん。あんな背中を見られたら、どんな男だって引いてしまうに決まってる。全蔵にだって一度も見せたことはない。自身の寝間着をぎゅっと掴んで月夜に照らされた銀時を見上げた。
「…脱いで」
「え…」
「いいから、脱げよ」
「だから、背中は…」
「…見せろよ、背中」
銀時の瞳は、とても真っ直ぐで。少しも意地悪を言っているような雰囲気ではなかった。少しだけ躊躇いながらも、私は銀時に背を向けて寝間着を下ろした。露わになる傷だらけの背中。私が背負い続けた過去。いくらもう終わったこととはいえ、この傷が消えることはない。ひんやりとした空気が背中を掠めて、思わず肩を竦める。何も言わない銀時に不安を覚え、振り返ろうとしたところで、後ろから抱きすくめられた。
「…傷なんて、一つもねェよ」
「ぎん…」
「綺麗な身体だ」
「…っ」
「過去っつーのはな、どんなに消したくたって消えてくんねェんだよ。背負うしかねェ、向き合うしかねェんだ。言ったろ、お前のトラウマごと背負ってやるって。お前が今まで傷ついてきた分だけ、この傷の数だけ、俺がお前を愛してやるから、心配すんな」
そう言って銀時は私の背中にキスをした。心が締め付けられて、ピクリと身体が反応しても構うことなく、私の傷を癒すように舌が這う。その度に私は声にならない声が漏れ出した。背後から伸びてきた手のひらが、膨らみに触れたところで私は堪らず声を上げた。
「…んっ」
「…お前は何も考えずに、俺だけ見てりゃいーから」
銀時の大きな手のひらが柔らかく私の膨らみの形を変えるたび、私の口から漏れる声が済んだ室内に響いた。絶えず背中に舌を這わしながら、冷えた身体に直接伝わる銀時の体温が、愛おしくてたまらない。きゅっと膨らみの頂を摘まれて、私は身震いをした。
「…あっ、ん…」
「うわ、何その声。随分やらしー声出すんだな」
「…ふ、…あ、っ」
耳元で低く囁く銀時の声が、私の中の熱を滾らせる。施される愛撫に素直に受け入れながら、声を上げた。するすると空いた片手が下腹部に降りて、太ももの付け根を焦らすように撫でられれば期待に声は高くなる。
「…っあ、銀時、…くすぐったい」
「散々焦らしてたお仕置きだっつーの」
「…はっ、あっ…」
膨らみを撫でていた手が私の口元に伸びてきて、長い指が唇を割って口内へと侵入する。弄ぶように舌を指で絡め取られると、息苦しさにだらしなく声が漏れた。変わらず下腹部に伸びた指は、敏感なところには触れずにゆるゆると付け根を行ったり来たりを繰り返す。その行動がもどかしくって、無意識に腰が震えた。
「なァ、触ってほしい?」
「…っん、んんっ…」
指で舌を捉えられているせいで、言葉が出ない。表情が見えない銀時の声色は、随分と楽しそうで私は恥ずかしさに首を横に振る。それなのに、身体はいつになく正直で期待に腰が浮いてしまって敵わない。
「膝ついて、腰上げて」
「…っ」
気が付けば私は言われるがままに立て膝になっていた。下着をずり下されたと思えば、思い切り後ろから体重をかけられて前にのめり込むように倒れた。布団に胸を押し付け、立て膝のまま銀時にお尻を突き出すような格好にさせられて、私は思わず声を上げた。
「待って、やだ、こんな格好…」
「もう待たねーよ、つーかどんだけ待たせんだ」
「っあ…!」
突き出したお尻に沿って、銀時の長い指が敏感な所を撫でたところで、私は身体を震わせた。ゆるゆると形状に沿うように指を滑らせながら、時折蕾に指が触れるたび、電気が走ったように背筋が伸びる。
「散々焦らしときながら、何でこんな濡れてんの」
「…いや、あっ、あぁっ…!」
「マジで、ヤバくねェ、これ。太ももまで垂れてるけど」
いつになく意地の悪い声色にも言い返すことができずに、与えられる刺激を受けながら、私はまるで発情期の猫のように声を上げ続けた。腫れた蕾を執拗に突かれると、どんどん呼吸がままならなくなる。
「だめ、…や、銀時、あ、あ、…っだめぇ…っ!」
「何がダメなの、んな喘いでるくせに、まだダメなの?じゃーこれは?」
「あっ!…やぁ…ぁあッ!」
「これならいいの?」
蕾を撫でる手とは別に、指が中に侵入してきたと思えば、ゆるゆると中を指が泳ぐ。その度に私は意識を手放しそうになるから、必死に布団を握りしめて抗った。そんな抵抗も虚しく、中の指がある一点を撫で始めたところで私の膝はとうとう笑い出した。
「あぁっ!んん、あっ、嫌、いやぁ…っ!まって、ぎん…だめ、あぁあッ…」
「…イッていーよ、見ててやるから、イけよ」
「あ、あッ…いやぁ、……ふ、ぁあぁッ!!!…」
二箇所からの強烈な刺激に耐えきれずに、私はかぶりを振って意識を保とうとしたのに、艶めいた銀時の囁きに、私は呆気なく絶頂を迎えた。
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