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「ごめ、…本当、」
「お前さァ、マジに体調悪ィなら無理にメシ食うなよ」
「ごめんなさい…」
私は布団に横たわりながら、呆れ顔の銀時に素直に謝った。先ほどより熱が上がった気がする。風邪というのは体調が良くなったり、悪くなったりと振り幅が大きくて困る。傍らに座り込んだ銀時は、冷やした濡れタオルを絞り、私の額に乗せた。
「…はぁ、…っ」
「……」
「は、…はぁ…、」
「…俺居間にいてもいい?」
何で、と掠れた声で銀時を見上げると、困ったように私を睨みつけた。着流しに手を伸ばしてぎゅっと裾を握ると、銀時ははぁあ〜っと大袈裟にため息をついた。
「あのさァ、いくら病人とは言え、好きな女が火照った顔でハァハァ言ってたら、色々とこみ上げるもんがあるだろーが。生殺しですか?何かの特訓ですかァ、コノヤロー」
「…行かないで、銀時、…っ、ここにいて」
「……」
私の懇願に銀時はあーもう!と声を上げて、横に転がり肘をついた。私のお腹をポンポンと叩きながら、不満そうな表情を浮かべた。文句を言いながら、何だかんだ優しい銀時に私の頬は自然と綻んだ。
「今日のところは我慢してやるけど、アレな、風邪治ったら絶対ェ一発ヤらせろよ」
「……」
「アレ?無理、じゃねェの」
意地悪な顔をしながら、お腹を叩いていた手を私の頬に這わせて、私の顔を覗き込んだ。私は徐に手を伸ばし銀時の顔を引き寄せて、唇を重ねた。私の行動にもはや驚きもせずに、私に覆い被さって、私の唇を優しく包み込んだ。割り込まれた舌に応えながら、必死に銀時を感じた。散々見ないふりをしてきたけど、やっぱり私は銀時が好きだ。何度この腕に触れたいと思ったか。何度この唇を感じたいと思ったか。私は全身全霊をかけて、銀時を想っているのだと、この濃厚なキスで再確認した。静かに離れた銀時に、小さく笑いかけた。
「…考えとく」
えっ、と声を上げた銀時の驚いた表情を最後に、私はまた眠りの海へと溺れていった。
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