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「お口に合えばいいですけど」
「…ほ、美味しい。これメガ…新八が作ったの?」
「…もういいですよ、メガネくんで」
「おかわりアル!」
「神楽ァ、一応これ、なまえのだからな」
机を囲みはふはふと新八特製のタマゴ粥をみんなでつつき合う。先ほどよりいくらか楽になった私も、ぼんやりとしながらタマゴ粥を頬張った。おいしいな、これ。…ふと、月詠に連絡をせねばとゴソゴソ袂を漁るも、携帯が見当たらない。それに気付いた銀時は、自身の懐から私の携帯を取り出した。私の額には冷や汗が浮かんだ。…これは熱のせいではない。
「な、なんでお前がそれ持ってんの」
「一応、月詠に連絡入れとこーと思って」
「……見たの?」
銀時どころか、神楽と新八もニヤニヤと笑みを浮かべている。はぁっとため息をついて額に手を当てた。まさか私が銀時とのツーショットを待ち受けにしているとは、思わなかったんだろう。隣で銀時は鼻の穴をひくひくさせながら、私を横目に携帯をこれ見よがしに開いてみせる。
「やっぱりさァ、お前俺のことすげー好きだよね」
「なまえも意外と可愛いとこアルネ!」
「神楽…意外と、は余計でしょ」
「僕もてっきりもうその写真削除してるのかと思ってましたよ」
「待ち受けになんかしちゃって、可愛いやつだなァ、このこのォ」
ウザい三人をシカトして「ごちそうさまでした」と立ち上がった私に、今度は驚いたような顔を向けてきた。
「お前、まだ熱下がってねーんだからちったァゆっくりしてけよ」
「いや、大丈夫。勝手に来といて悪いけど、帰る」
「そんな身体で、また倒れちゃいますよ!?」
「ツッキーは熱下がるまで地上にいていいって言ってたアル!」
「…え、そうなの?」
月詠のニンマリと腹立つ笑顔が浮かんで、私は上げた腰をまた下ろした。安心したように笑う三人に、私もつられて笑って見せた。
「つーわけで、俺こいつの看病するから、お前らはどっか行ってろ」
「何でアルか!?私もなまえの看病したいアルぅぅ!銀ちゃん絶対邪なこと考えてるネ!」
「か、考えてねェよ!相手病人だよ!?銀さんそんな鬼じゃないよ!?」
「まぁまぁ、神楽ちゃん、久しぶりに銀さんの幸せそうな顔見れたんだから。ほら、僕たちもやることあるでしょ?定春の散歩とか、定春の散歩とか。あとは定春の散歩とかね!」
「定春そんなにいないアルぅぅぅ」
半べそをかきながら定春と新八に連れられて神楽は万事屋を出て行ってしまった。あんな子供たちに気を使わせて、頭が上がらない。というより、さっきの新八の言葉。…銀時の幸せな顔?ちらりと銀時の表情を伺うと、恥ずかしそうに私から目を逸らした。
「…ふぅん。銀時、あんたも私のことすげー好きなんだね」
「バッ…ちげーよ!久々にまともな飯にありつけたから幸せなだけだよ!勘違いすんじゃねェよ!」
「ふぅん、あ、そう」
先ほどの仕返しだ。ニヤリと口角を上げると、銀時は気まずさを散らすように後頭部を掻き毟った。そんな銀時を見ていたら、何とも言えない感情がこみ上げてきた。…アレ、これは、…。
「ぎ、銀時…」
「あァ?!」
「ちょ、…無理…」
「えっ!?無理って?!」
「…うぅっ」
やはり無理に地下に帰らないで正解だった。「オボロシャァァ」と先ほど食べたタマゴ粥を戻した私を見て、銀時は絶叫した。
「テメーもゲロインかよォォォォ!!!!」
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