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二人でソファに座り込み説明書を覗き込みながら、散々時間をかけてやっとのことで登録できた万事屋の電話番号。ソファの背に首をもたげた私はふぅ、とため息を吐いた。
「俺も買おっかなー、携帯」
「その前に神楽たちに給料払ってやれば?」
「じゃー俺の分も買ってくんない?」
「本当甲斐性ねェヤローだな」
銀時が携帯電話かぁ。何かとてつもなくくだらない内容のメールや電話をしてきそうで、想像しただけで面倒くさい。そもそも月詠だってあんな顔してるくせに、携帯の中では違う人格になってるし。あいつ本当はそういうキャラで行きたかったのかもしれない。そんなことを思っていると、銀時は私の携帯を取り上げて、物珍しそうにパカパカ開いたり閉じたりを繰り返す。そして「あ!」と突然声をあげるもんだから、私は肩を竦めた。
「これカメラついてんじゃねーか」
「あーそうみたいだね。そんなんいらないっつったのに、月詠がこれがいいって」
「ふーん」
「…ん?」
ずりずりと私に寄ってきた銀時は、携帯を斜め頭上に持ち、チラチラと視線を送ってきた。どこのギャルだ、お前は。何その絶妙な自撮り角度は。
「…いや、何で記念すべき初写真が、お前とのツーショットなの?」
「ハァ?普通女っつーのはこーいうのやりたがんじゃねーの」
「別にやりたくねーよ」
「バカ忍者とは撮るくせに、俺とは撮れねェの?何なの、お前。ほんとに俺のこと好きなの!?」
「…チッ、やっぱ根に持ってやがる」
はぁっとため息をついて仕方なく銀時に顔を寄せる。「行くぞー」なんて声に合わせてカメラにピースを向けると、銀時はなんの前触れもなく私の頬にキスをした。そして同時にカメラのシャッター音が響く。ニンマリと笑う銀時に、してやられてしまった。
「オイ、約束と違うじゃねーか。何してくれてんだ」
「はァ?俺は指一本っつったのォ。指は一本も触れてねーだろ」
「屁理屈言ってんじゃねェェェ!!!」
顔を真っ赤にしながら胸倉を掴む私をよそに、銀時は何やら携帯をいじくっている。と、何だか視線を感じて戸へと視線を送ると、バッチリとこちらを除く二つの瞳と二つのレンズ。私の顔は一瞬にして真っ青になった。
「イチャイチャしてるアル」
「…してません」
「銀さんがなまえさんに、キ、キ、…!」
「…してません」
「おー帰ったか、ガキ共ォ」
「いやお前ちょっとは動じろよ!!」
おずおずと戸を引いてニヤニヤとした神楽と顔を真っ赤に染めた新八が私たちの元へとやってきた。ガキになんつーもん見せてんだ、こいつは。こんな奴の元にいたら二人ともまともに育たねーよ。神楽は携帯を覗き込んで、それを銀時の手から奪い取った。
「なまえ〜、私とも写真撮ってヨー!」
「いいよ、使い方わかんの?」
「わかるアル!」
「「はいチーズ!」」
「って何で神楽には二つ返事なんだよ!?」
その日だけで私の携帯には、神楽と撮った写真がフォルダいっぱいになった。女の子っていうのは、こういうのが好きなもんなんだなぁ。可愛いなぁ、神楽。
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