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そしてここへ訪れる前に、悩みの種である月詠の元へと顔を出した。
『ツッキぃー』
『なまえ!ツッキーと呼ぶのはやめなんし!!』
『万事屋までの道、地図にしてくんない?』
『とうとう仲直りする気になったのか?』
『んーそういうわけじゃないんだけど。一応月詠には改めて言っとく』
『何じゃ?』
『…私、多分、銀時のこと、好きなんだと思う』
『……』
『…月詠?』
『何を、今更。それに気付いていなかったのは、ぬしだけじゃ。わっちも日輪も、きっと本人でさえ気付いておるぞ』
『……』
『さ、これが地図じゃ。さっさと行ってやりなんし』
とまぁこんな感じで、月詠には改めて自分の気持ちを伝えてきた。だから何だと言われたらそれまでだったのだが、やはり月詠には伝えておきたかったのだ。
「…マジ?」
「マジだから、離せ!神楽たちに見られたらどーすんだ!」
「いーの、アイツら買い物行っていねーから」
私の肩をガッチリと掴んだまま、驚いた顔を崩さない銀時は、何を思ったのか私の顔に自身の顔を思い切り寄せてきた。咄嗟に私は銀時の口を両手で覆い、押し返した。
「ちょ、…やめろ!」
「何すんだよ!?もう一回したんだから別にいいだろ!!なに、お前意外と、ムードとか気にしちゃうタイプなの?」
「いや、つーかただ好きかもってだけで、彼氏彼女とかになる気ないから!!!」
「はァァァ?!!」
私に押しのけられた銀時は、怒り半分絶望半分といった表情で私を見下ろした。
「好きってだけで、十分なんだよ!今は!」
「はァァァァァ!?何それお前、中学生なの?中学生の恋なの?!つーか今時中学生のカップルですら、好き合ってたらキスぐらいすんだろーが!!」
「うっせーな!!私にも思うところがあんだよ、色々と!!こんな気持ちになれただけでも大進歩なの!」
「じゃあせめて一発ヤらせろよ!」
「テメーは原始人か!何だその誘い方!!中学生どころか原始人まで退化しちまってんだろーが!つーかせめての使い方おかしーだろ!」
「あ!お前まさか俺のことも繋ぎ止めておきながら、あのイボ痔にもいい顔してんだろ!どっちもつまみ食いしよーとしてんだろ!」
「してねーよ!お前だけだよ!……っ!」
勢いに任せて、そんなことを口走ってしまった私は慌てて言葉を止めた。銀時は眉を吊り上げ怒鳴りつけていたくせに、その言葉を聞くなり、プシューと熱が冷めたように眉を下げてだらしない顔に戻った。
「…じゃあ何、どこまでならいいの。ABCのどこまでならしていいの」
「ABCがよくわかんないけど。…じゃあAかな。”会いにいく”のA」
「ABCって頭文字じゃねーよ!!!じゃあBって何だよ、逆に!!」
「…会いに来るくらいなら、いいよ。きても」
「何でちょっと譲ってますみたいな感じなの?」
「だから、私も会いたくなったら、…きてもいい?」
「……」
言ったそばから何だか恥ずかしくなって、思わず俯いてしまった。今は、付き合うとか、何だとかそういう風には考えられない。でも、銀時に会いたいと思ってしまうのは事実だし、まずはそういう気持ちを大切にすることから始めてみようかと思った。ちょっと気になるからすぐ付き合うとかじゃなくて、ちゃんと愛をカタチにしてから、そういう関係になりたいなんて、ワガママだろうか。
「…あーもう、わかったよ。じゃあ要するに、お前をその気にさせなきゃ、それ以上にはいけねーってことだろ?」
「何かこう、徐々に行きたいというか…」
「ったく。…じゃあそれまでお前に指一本触れねーよ、約束する。楽しみは後に取っといた方が、美味しくいただけるってモンだ。ショートケーキのイチゴと一緒でな」
「…ジャンプの次は、イチゴかよ」
諦めたように見えて何だか意気込んでみせる銀時に私は、ひとまず安心した。メンドクセーなんて言われてしまうかと構えていたが、杞憂だったようだ。
「その代わり、本気で落としに行くから、覚悟しとけよ」
それどころか何だか無駄に火をつけてしまったようで、私は苦笑いをして曖昧に頷いた。
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