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バイクを止めて私の隣に腰を掛ける銀時をよそに、全蔵は背の低い植樹帯に突っ込んだまま、ケツを抑え、呻き声を上げている。あーあ、また痔が悪化するな、ありゃ。
「オイ、なまえ。俺は浮気を許せるほど心の広い男じゃねェぞ、それが元カレとあっちゃ尚更だ」
「浮気なんかしてねーし、そんなこと咎められる関係でもねーし」
「テメェ!人のほっこりタイム邪魔すんじゃねェよ!この腐れ侍!!」
「うるせェェェ!!!何がほっこりタイムだ、もっこりイボ抱えてるやつが笑わせんじゃねェ!」
すっ飛んできた全蔵は銀時の髪の毛を引っ張ったり、はたまた銀時は全蔵のヒゲを引っ張ったり、またケツに蹴りを入れたりと、騒がしい。私はどこへ行っても心休めることができないのか。大きくため息をついて、またピザを一枚頬張った。
「それになァ、なまえ!お前こいつとデキてみろ、猿飛が黙ってねェぞ!」
「…何で猿飛?」
「え、何、お前アイツと知り合いなの?」
「…一応御庭番筆頭のバカと付き合いがあったもんで。つーか何、猿飛って銀時のこと好きなの?だりー、そーゆう競争率高い男だりぃーよ、銀時」
「俺に言うんじゃねェ!!!ったく、忍者っつーのはどいつもこいつもよォ。忍者っつーのはストーカーの仕方も学ぶんですか?忍者学校ストーカー科でもあるんですかァ?」
バチバチと火花が散ってる二人に構わず、私は銀時のヘルメットを奪い取って、自分の頭にかぶせた。
「銀時、もうそいつ構ってないでいいから。団子屋でもいくぞー」
「おー。つーことだから、じゃあな、元カレくん」
「待て、まだ話終わってねェだろ!なまえ!!」
銀時がバイクに跨ったのに続き、私もバイクのケツに腰を下ろした。笑顔でひらひらと手を振り、全蔵に別れを告げると「俺ァ諦めねェからなァァァ!!」と情けない叫び声が聞こえた。
「銀時、お前案外モテるんだな」
「しかもどーでもいいやつばっかにな。…本命は元カレと密会してやがるしよ」
「でもって、案外グイグイくるんだな…」
追い風を受けながらバイクを走らせる銀時の腰に手を回し、私は先ほどの全蔵の言葉を思い出していた。
『お前を譲るつもりはねェ』
『なまえ、お前を護れるのは俺だけだ』
何を今更カッコつけちゃって。全然カッコよくないっつーの。そんなこと言うくらいなら、浮気なんかしなきゃよかったじゃねーか。
『あれは浮気なんかじゃねェ、あの時…』
そういえば、あいつさっきなんて言いかけたんだろう?銀時が現れたから有耶無耶になっちゃったけど。つーか今更言い訳なんて聞きたかねーよ、バカ忍者が。
ぼんやりしているうちにたどり着いた、いつだかの団子屋。バイクから飛び降りると、銀時はどこか不機嫌そうな表情を浮かべていた。
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