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ひのやに戻るともう店は閉めているようだった。奥の部屋から日輪や神楽、新八に晴太の声がする。聞こえてきた日輪の言葉に戸を引こうとした手がピタリと止まった。
「あの子らはね、姉妹のようなものなのよ」
「…姉妹、ですか?」
「ああ見えて、なまえの方がお姉さんなの、ふふ」
驚いた声を上げる新八と神楽に、私は苦笑いをしてそのままその場に立ち竦んで、日輪の言葉を聞き入っていた。
「先に百華にいたのは、なまえの方なの。あの子は本当に強くて、みんなに慕われてた。私だってずっとあの子が次期頭領になると思っていたわ」
「じゃあ、なんでツッキーが頭領やってるアルか?」
「なまえはね、ある日を境にパッタリと修行をするのをやめたの。…理由はわからないけど。でもちょうどその頃から、月詠は凄まじい成長を遂げてね。きっとなまえは月詠が頭領になるのを望んでいたんじゃないかなって」
「…そうだったんですね」
「あの子らは自分の身を省みないで、吉原と私、そして互いを護り続けていたの。自分に何があっても、決して何にも依りかからない。ずっとあの子らを護り続けてきた、あの人がいなくなってからは、…余計にね」
「あの二人を護ってきた、あの人って…?」
「…なまえと月詠の師匠、百華初代頭領の、」
「日輪、ちょっと喋りすぎじゃない?」
スパンと戸を引いた私に、四人は驚いた顔を向けた。「おかえりなさい」という日輪の言葉を受けながら、横に腰を下ろした。ジト目で日輪を見つめると肩を竦めて微笑んできた。
「なまえさん、何かわかったことはありましたか?」
「いーや、さっぱり。どいつもこいつもフワフワした話しか知らないみたい。…でもどうもキナ臭いんだよなぁ。つーかさ、月詠と銀時は?」
「それがまだ帰ってないんだよ。なまえ姐、月詠姐たち、大丈夫なのかな…」
晴太の言葉に、私の胸騒ぎはさらに加速する。心配そうな晴太の表情を見て、私はすぐに笑顔を作って見せた。
「大丈夫、月詠は私が護るから。…ねぇ、神楽、メガネくん。少しの間吉原を見ててくんない?」
「…なまえどっか行くアルか?」
「あいつら探しに、地上に行ってくる」
そうして吉原を離れ、地上で二人を探し回った3日間、私は気が気じゃなかった。…月詠に何かあったら、私はどうやって生きていけばいいんだ。それに、…銀時。早くお前のあのだらしない顔を見せて、…私を安心させて。
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