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「団子は冷蔵庫ね。食ったら帰ってよ」
「ハイハイ。あ、あん団子あんじゃん!」
結局断る理由もなく、家に上げることを許してしまった私は畳に寝転がりながら、月詠のことを考えていた。…私、とんでもない裏切り者じゃない?月詠の口からそうだと聞いたわけではないが、あれはどう見ても私の予想通りだろう。本人に聞くわけにもいかないし、それとなく日輪に聞いてみるか。はぁ、何だかとてつもなく後ろめたいなぁ。
「……って、オイ、聞いてる?」
「ごめん、何?聞いてなかった」
ハッと我に返った私を、銀時は団子片手に呆れたような顔で覗き込んだ。あ、それ、私が後で帰ったら食べようと思ってたあん団子じゃねーか。目敏いヤローめ。
「あれからストーカー忍者とはどーなんだよ」
「どうって?どーもしてないよ。相変わらずストーカーだけど」
「ふぅん」
それだけ言うと、銀時は団子をパクリと頬張った。何、それって心配してくれてんの?なんて思ったのも束の間、へらりと笑ってまた私に視線を向けた。
「より戻さねェの」
「は?」
「何かそーゆう元カレ元カノみてェのって、意外と腐れ縁だったりすんだろ」
「いや、ないない。つーか、付き合ってたのだって何年も前の話だし。そんでもってあいつ浮気したんだよ?無理でしょ、そんなん」
突然の銀時の言葉に、私は慌てて否定をした。随分早口で言い終わった後に、少し恥ずかしくなった私はそのまま寝返りを打って銀時に背を向けた。また銀時はふぅんと声を上げたっきり、何も言わなくなってしまった。
「…銀時は、そーゆーやつ、いないの」
「んーまぁ、いねェけど」
「…ふぅん」
そんなことを聞いて、私はどうするつもりなのか。何も考えずに出た言葉に責任が持てないことに気づいた私は、また口を噤んだ。ずっと感じていた胸の奥の違和感に、気付きたくなかったから。
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