Ichika -carré- | ナノ


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「はァァ!?!」


私の言葉に銀時は私の手をガッと掴んで口元から離せば、驚きと怒りが入り混じった切羽詰まった表情を向けてきた。


「…ごめ、…いや、だって…」

「あのヤロー嘘つきやがったな!!!!」

「……へ?」


怒りの矛先が自身ではないことに疑問を抱いて首を傾げた私に、くわっと眉を吊り上げる銀時に少しだけたじろいでしまった。…嘘?あのヤローって、…全蔵のこと?一体どういう意味だ?私の疑問を察したように怒りで興奮気味の銀時が言葉を続けた。


「あのイボ痔ヤロー、このことがあってから一度たりともお前のこと抱いてねェって言ってたんだよ!」

「…え?」

「そーいう雰囲気になったらすぐ睡眠薬飲ませて寝かしつけてたって言ってやがったのに…やったの!?マジであいつとやったの!?!」

「睡眠薬?」

「そーだよ!お前に鎮痛剤って嘘ついて、睡眠薬飲ませてたって言ってやがったのに…あのヤローぶっ殺す」


銀時の言っている意味がわからずに、これまでの日々を思い返してみれば、…私は確かに痛み止めを飲んでいた。…それが本当は睡眠薬だったなんて。そんなこのあり得るの?まぁ薬飲んだ後の記憶が曖昧だけど、朝起きたらスッキリしてたし…。………あれ?私毎晩全蔵に抱かれたと思い込んでたけど、あのスッキリって性的な意味じゃなくて、ただ熟睡できたことによるスッキリだったの?確かに抱かれた記憶があるかと聞かれれば、…はっきりとあるとは言えない。


「…私、全蔵に毎晩抱かれてたと思ってたんだけど、…確かにそういう雰囲気になったらすぐ薬飲まされて、…で、気がついたら朝で、…あれ、私、…全蔵とやってない?」

「アイツはそう言ってたぜ。そんな鬼畜なことしねェさ、とか何とか格好つけてやがった」

「…そうなの?」

「一緒に寝てるっつーのは聞いたけど、それは仕方ねェっつーか、仕方なくねェけど仕方ねェから…今回だけは許してやるよ。今回だけだからな?次はねェからな!?」

「……なんだ、そうなんだ、…そっか。よかった…」


よかった、とは終始私たちに気を使ってくれていた全蔵に随分と失礼な話だが心底そう安心してしまったのは事実で。銀時も先ほどまでの興奮が収まったのか、少しだけ安心したような表情を浮かべている。


「……あっ」

「何?今度は何!?元通りになったっつーのに次から次へと何でそんなに問題発生すんの!?」

「……やってはないけど、キスはした…。それは覚えてる」

「……あァ!?」


思わず口元に手を当て気まずい表情を銀時に向ける。だって、私全蔵と付き合ってると思ってたし…、全蔵も全然拒否しなかったし…と意味のない言い訳が浮かんでは消える。銀時は冷めた怒りがまた再燃したように眉と口角をピクピクと動かして私の手首をガシッと掴んで自身の方へ引き寄せた。


「……それは聞いてねェし、許さねェ」


結構本気で怒りを孕んでいる銀時の瞳に見下ろされたかと思えば、次の瞬間随分と乱暴に唇を奪われた。キスというよりも、本当に食べられるんじゃないかって程の勢いで私の唇を啄む銀時に、私の思考はどんどん奪われていく。後頭部を強く押さえられて逃げ場のない私は、その荒っぽいキスを受け入れながら銀時の腰に手を回せば、銀時もそれに応えるように私の腰を引き寄せた。


「…っ、ん、…っ」


荒々しかったその動作がすぐに止んだかと思えば、何度も何度も私の唇に自身の唇を合わせる。優しいその感触がくすぐったくて私は思わずふふ、と口角を上げてそれを受け入れた。ちゅ、ちゅと音を立てて何度も合わせたり離したりを繰り返して気が済んだのかようやく私を解放した銀時は、同じように微笑みながら最後に私の額にまた小さくキスを落とした。


「…次はねーからな。俺のこと忘れんのも、他の男と寝んのもキスすんのも、絶対許さねーからな」

「…お前こそ、もう距離置くとか女々しいこと言うんじゃねー」


互いにきっと睨み合って、それが可笑しくてまた互いに笑い合って、どちらからともなく強く抱きしめ合った。もう二度とあり得ない。銀時を忘れるなど、そんなバカなことあるわけないよ。だって銀時がいないと、満足に夜も眠れないのだから。
…私は銀時が好きだ。きっと自分で思っているよりも、何倍も何十倍も銀時が好きなのだ。そんなことを再確認しながら、ただ静かに銀時の腕に包まれながら、同じように銀時を抱きしめ返した。




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