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「お前ら幼馴染なんだってな」
銀時御用達の団子屋「おだんご本舗」とやらに訪れた私たちは、オススメのみたらし団子を手に、並んで長椅子に腰を下ろしていた。口いっぱいに団子を頬張る銀時はそんな言葉を私にかけてきた。
「そうそう、これくらいの時からずっと一緒」
ちょいっと指をそら豆くらいの大きさにして銀時に向けると「お前なんかオッさんみてーだな」なんて失礼な返事が返ってきたからそのまま団子の串を膝に刺した。
「ま、色々あったけど。何だかんだうまくやれてるよ、私たちは」
「ふぅーん、案外ちゃんとした絆あんだな」
「まーね、ほら、あの子危なっかしいじゃん?月詠には私がいなきゃダメなんだよ」
「俺からしたら、お前も十分危なっかしいけど」
その返事には否定できずに声を出して笑った。みたらし団子を頬張って、そういえば銀時に話したかったことを思い出した。
「神楽とあのメガネくんって、銀時の子供なの?」
「あんなでけェガキいるわけねーだろ!ただの従業員ですぅ」
「ま、確かにあんたのガキ孕んでくれるいい女なんているわけねぇか」
「おま、本当口悪ィな!んなんじゃお嫁にいけねーぞ、三十路過ぎたら後悔すんぞ」
「それ以前にこの顔じゃ、どんなに淑やかにしてたって誰も嫁にもらってくんねーって」
「あァ、その傷のこと?月詠もそんなこと言ってたな」
そう。私たち百華は、女を捨てた集まりだ。皆顔のどこかしらに傷をつけて、商売道具にならぬ顔にしたのだから。そんな私たちが、嫁に行くなど夢物語も甚だしい。全蔵と恋仲にあったのだって、あいつのネジが数本外れていたってだけで、他のやつらの浮いた話など聞いたことはない。無論、月詠も同じだ。
「でも、お前意外とキレーな顔してると思うけど」
そう言って銀時は徐に、私の前髪をヒョイっと上げて見せた。瞼が重く目にかかった眠たそうなその瞳が、私の瞳を覗き込む。途端に私は顔が熱くなった。
「…や、やめろ、バカ!触んじゃねェ」
「え、何、照れてんの?…プッ!顔真っ赤にして、照れてやんのォ」
「てめ、…殺すぞ!」
銀時が触れた額は熱が帯びたように熱い。何なんだこの気持ち。本当に、何だって言うんだ。この前から、私の頭はどうかしてしまったのだろうか。触れられた額を押さえて、銀時を睨みつけた。
「意外と可愛いとこあんのな」
「…意外ってゆーな、この陰毛白髪!」
「い、陰毛?!…前言撤回。性格は可愛くねェ、中年オッさん」
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