▼ 2/2 ☆ side服部全蔵(銀時)
テレビの光だけが頼りの暗闇の中。
目の前の目隠しをされ胸元がはだけたなまえを見下ろしながら、俺は何とも言えない衝動に駆られていた。…こいつこの身体に対しても普通に感じんのかな?なんて浮かんだ疑問が頭から離れずに僅かな抵抗を見せるなまえの胸元を弄った。
「なァ、なまえ。やっぱ腐れ忍者の指でも感じんの」
耳栓をしているなまえにそんな疑問をこぼしてみても、聞こえているはずもないそれは無意味なものとなった。やだ、と小さく呟くなまえを無視して膨らみを鷲掴んでやわやわと形を変えれば漏れ出す僅かな吐息に俺は自身でその行為に臨んでおきながら、複雑な気持ちになった。首筋に舌を這わせばふるふるっと小さく身体が震え出して、この身体を受け入れているように感じた。
「…すげぇ勃ってるんだけど、そんなこのシチュエーションいいわけ?あのヤローのこと考えてんの?」
辿り着いた膨らみの頂を口に含めば「ふぁあっ…!」と普段よりもいくらか反応のいいなまえに、内心ムッとしてしまった。俺の本来の舌よりいくらか薄めのこの舌に、なまえは高い声で啼いている。俺に感じているのか、それともヤローの身体だから感じているのか。考えただけで嫉妬の炎が燃え上がる気がした。勝手に事に及んでおきながら自分勝手な感情だというのは重々承知なのだけど。
「…あ、っ…やだぁ…、やめて…っ」
控えめに俺の肩を押し返しながらも俺が与える快感に声を上げるなまえは今何を、誰を考えているのだろうか。膨らみから口元を離し、キスを落としながら下腹部へと顔を寄せればなまえの脚に力が入った。下着の薄い布の上から筋に沿うように舌を這わせるなり、また聞こえてくるなまえの甘い啼き声。
「…ひっ、あ…やだ、…やだぁっ…!」
「すげー濡れてる。…ホント淫乱な、お前」
小さくそう呟き下着をずらして直接その茂みをかき分ける。辿り着いたぷっくりと腫れた蕾を舌でねぶれば、なまえは大きく身震いをしてそれを受け入れていた。心許ない薄い下着は俺の唾液となまえの溢れんばかりの蜜によって使い物にならなくなっている。舌先を尖らせてチロチロと執拗に蕾をいたぶると、なまえの震える細い腕が俺の髪の毛をぐわっと握った。
「…あ、あっ…ねぇ、あッ……ぃぁあッ!あぁ…やめて…!」
泣いているのか声が普段より震えている気がする。目隠しをしたなまえを確認する術もなく、俺はまた何とも言えない感情に苛まれた。…何かいつもより感じてねェ?やっぱりこいつの身体だから?そんなにこいつの身体に触られんと気持ちいいわけ?自分勝手な苛立ちをぶつけるように、下着も脱がすことなく際から蜜の出処めがけて指を埋めれば大きくしなるなまえの身体に、更に高くなる声。蕾を口に含んだまま、中の上壁を中指と薬指を用いて激しく撫でてこの複雑な気持ちを掻き消そうと必死だった。ひくひくと伸縮を始めるなまえに内心呆れていた。やっぱ俺の身体じゃなくても、…誰でもいいのかよ、なんて自身の彼女に対して随分と冷てェ言葉を投げかけようとした時、髪を掴んでいる手に強く力が入った。
「やだ、いやぁあ…!お願い、銀時。やめて…やめて!!お願い、やめてぇ…ッ!!!!」
「…っ!」
なまえは確かに普段からやだ、やめて、いや、と泣きながら喘いでみせる。素直じゃないとこも可愛い、なんて思っていたのだけれど。今日は違う。いつものそれとは比べものにならないくらいの叫び声で俺の愛撫を拒絶している。大きくしゃくりを上げながら身体を震わせるなまえに俺は指と口元を離して思わずなまえの顔を覗き込めば、すぐに冷静さを取り戻した。嗚咽を吐くなまえを抱きかかえ耳栓を外して、目元を隠す帯を解けばなまえはぐしゃぐしゃの泣き顔で俺の胸に顔を埋めて更に泣き出してしまった。帯は色が変わってしまうほどに濡れていて、どれだけなまえが涙を流していたのか知らしめた。
「…、…こんな形で抱かれても、全然嬉しくない…」
「…なまえ…」
「いくら中身が銀時でも、全蔵の身体に感じるなんて、…そんなの、いや…。銀時のこと、裏切ってるみたいで嫌だよ……」
なまえの言葉にぐっと心臓が締め付けられた。きっと俺と同じようになまえも葛藤していたのかもしれない。俺の魂が入ったヤローの身体に抱かれること。それでもなまえはそれを拒絶した。"俺"を裏切りたくねェから、なんて理由で。
「…なまえ、悪かった。…ごめん、ごめんな…」
「やだ、バカ…その声で喋んな…っ、早く戻ってよ、…早く私の銀時に会いたいよ……っ」
うわぁん、と子供のように涙を流し声を上げるなまえをぎゅっと強く抱きしめた。俺なんつーことしてんだ、最低なクソヤローだ。なまえがどれほど俺のことを好きでいるかなんて、普段からわかっていたのに。暗にその気持ちを試すようなことをして、こんなに泣かせちまって。…最低な男だ。もう一度名前を呼ぼうとした瞬間、ばんっと勢いよく胸を突き飛ばされて、俺は大きく後ろに倒れ込んだ。
「何で匂いも全蔵なんだよ!!!バカ!脳が混乱してんだよ!死ね!」
「ちょ、待っ…今なんかいい感じの雰囲気だったよね、俺いいこと言おうとしてたよねェ!?」
「だからその声とその顔やめろ!やっぱり私あっちの部屋で寝る!朝んなったら勝手に出て行って!」
「えェェェ!!?!」
「んで中身元通りになるまで会いにくんな!わかった!?じゃあね!」
先ほどまで泣き声を上げていたなまえはどこへやら、くわっと眉を釣り上げながら布団を抱えたかと思えばぴしゃんと大きく音を立てて戸を閉めて部屋を出て行ってしまった。
「……切り替え早くねェ?」
そんな呟いた言葉が耳に届き改めてこれはあの忍者の身体なのだと実感して、はぁっと大きくため息をついた。なまえがいなくなった冷たい布団を羽織って静かに目を閉じたものの不謹慎にも口元の緩みを抑えることができない。
『銀時のこと裏切ってるみたいで嫌』
『早く私の銀時に会いたい』
……アイツたまにそういうとこあるよなァ。たまにだからこんな嬉しいのかなァ。…つーかアイツすんげー俺のこと好きなんだなァ。
「やっべー、超嬉しい」
両手で顔を覆い隠してみるも、またもやこれは俺の身体でないことを思い出し、イボ忍者が照れながら両手で顔を覆っている姿を想像した俺はすぐに真顔になった。…早く戻ってアイツの笑顔が見てーなァ。
俺は心からアイツの笑顔を護りてェと思ってた。その為なら何だってできるって、そう思ってた。
それ故、俺自身の心がどれだけ弱くなっているかに気付けなかった。本当に護られていたのは俺の方だったことになんて、少しも気付けていなかったんだ。
…なまえは、俺の全てだったのに。
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