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一先ず月詠と共に、銀時(全蔵)と全蔵(銀時)を引き連れひのやに向かっていた私は先ほどからひどい頭痛が治らない。折角土方から解放されたと思いきや、今度は全蔵かよ。何なんだよテメーの魂は、随分と尻軽な魂だなぁ。
「つーかさ、土方んときどーやって戻ったの。またそれで戻ればいーじゃん」
「それが…源外のじーさんとこのポンコツカラクリで治してもらったんだけど」
「源外のじーさんっつーと、例のカラクリの?じゃあそこ行けばいーじゃん」
「…さっきマヨラーと中身入れ替えてもらった後、すぐに出張が入ったとか何とかで江戸出ちまったんだよ」
「…何とも間の悪い話じゃな」
眉を下げて下唇を尖らせる全蔵(銀時)は普段見るよりもコロコロと表情が変わって面白い。それに引き換え銀時(全蔵)は普段の全蔵の如く目に前髪がかかっていて、うざったいったらありゃしない。ただでさえくるくるパーマでうざいのに、何でこんな前髪伸びてんだ。何で魂が入れ替わると前髪が伸びんだよ!
「俺はこのままでも何も問題ないぜ。合法的になまえを好き勝手出来るんだからな」
「違法だよバカ!つーか何でお前俺の身体で痔になってんの?何なの?もうその設定は抗えないの?元に戻るんだよねそれ?」
「それを言やぁ、テメーも何で前髪短くなってんだ?それどころか何で毛先うねってんだ!?何で入れ替わった先の髪の毛が天パになんだよ!?俺ァ天パなんか御免だぞ!」
「…ぬしら、やめなんし」
互いの髪を掴み合い例によっていがみ出す二人に、私と月詠は大きくため息をついた。何でよりにもよってこいつらが入れ替わっちゃったんだ?土方の時よりややこしいことになりそうだ。やっぱりさっきの予感は気のせいじゃなかったんだ。何でこんな意味のわからないイベントばっかり起きるんだ。しかも絶妙にめんどくさいことばかり。不意にふらふらとした足取りの全蔵(銀時)が私の前に立って、両肩に手を置いた。
「…なァ、こんな俺でも愛してくれる?」
「いやそれ一応元彼の身体だし…ちょっと嫌なんですけど」
「…だよね……」
「いや俺としては視覚的に幸せだからそのまま抱き合ってくれても構わねェぜ」
「やなんだけど!全蔵の身体に抱きつかれたくないんだけど!」
「ひでェこと言うなよ!!」
「俺いつになったらなまえと馴れ合えるワケ?もう色々爆発寸前なんだけど…」
「いやいくら中身が銀時でも、全蔵の身体と馴れ合うとか無理!すげー悪いことしてる気分になるから無理!」
心なしか少し喜んでいる全蔵(銀時)をシカトして辿り着いたひのや。事の顛末を日輪に話せば他人事だからと涙を流しながら大笑いをしていた。こいつ本当に性格わりーなオイ!全蔵(銀時)のあまりの落ち込みようにごめんごめん、と涙を拭きながらお茶を出す日輪に促されるまま、またいつぞやのように隣に月詠、向かいに全蔵(銀時)、銀時(全蔵)と腰を下ろした。
「それにしてもぬしらも災難ばかりじゃな」
「本当ね、一難去ってまた一難ね」
「一難どころか三難くらいきてるよ!この前は溺死しかけるし、その前は性別入れ替わるし!何そのとんでもイベント。少しくらい静かな時間過ごせないのか、私の人生は」
「オイジャンプ侍、その身体でならなまえのこと抱いてもいいぞ」
「すげェやだ!何かわかんねーけどすっげェやだ!」
「私だってやだよ!何が悲しくて全蔵の身体に抱かれなきゃいけねーんだ」
「だからさっきからひどくねェか!?それならこの身体でお前さんのこと抱いて…」
「オイイボ忍者、それ以上言うとこのヒゲ剃り落とすぞ」
「ところでそのカラクリの爺様とやらはいつ戻るんじゃ?」
「最低でも3日は帰んねェって言ってやがった…」
「3日もお前らそのまんまなの!?もーややこしいからさっさと地上帰れよ!」
「それが…」
聞けばまだ銀時と全蔵が入れ替わる前、無事に土方の身体と決別した際に神楽と新八にうちに泊まると言って出てきたそうで。その上新八の誕生日が近いと言うこともあって珍しく妙と九兵衛が万事屋に泊まりに来ることになっているそうで。…要するにこの身体では帰れないと。ていうか、お前新八の誕生日会すっぽかして女の家に来てんじゃねーよ!……って、……。
「はァ!?じゃあ私その身体のお前泊まらせなきゃいけねーの!?」
「…そういうこと」
「えーやだ!全蔵!お前がこいつ泊めてやってよ!」
「俺は男の趣味なんてねェよ!それに何が悲しくて自分のツラしたヤローを家に連れて帰んなきゃいけねーんだ!俺ァこいつの身体だし、近所に見られたら変な噂立てられんだろーが!」
「なまえ、一晩くらい泊めてやりなんし。見た目は服部かもしれんが、中身が銀時と言うことに変わりはありんせん」
「そうよ。銀さんだって好きで服部さんの身体になったわけじゃないんだから」
「日輪さん、何かその発言すげェ棘がない?俺も好きでこいつの身体になったわけじゃないからね?」
腑に落ちていないながらも仕方がないと諦めている全蔵(銀時)に、知ったこっちゃねェと気にもしていない銀時(全蔵)。そして他人事だからと全蔵(銀時)を助けてやれと言わんばかりの表情を向ける月詠と日輪に私はうな垂れることしかできずに仕方なく「…わかったよ」と小さく呟いた。
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