Ichika -carré- | ナノ


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あれから万事屋に帰ってきた身も心も入れ替わった神楽と新八を見て腰を抜かした私に、キッと鋭い眼光を向ける二人。次から次へと飛び込んでくる意味のわからない出来事に私は苦笑いと流れる汗が止まらない。


「社長夫人、このような時間にこのような場所で何を。社長、いくら夫人とはいえ勤務中に逢瀬など如何なものかと」

「オイ誰が社長夫人だ、こんなだらしねーヤツの夫人になった覚えはねーぞ。つーかお前新八か?新八なのか?!」

「いくら姉御とはいえ許されないアル、悪即斬アル」

「神楽お前いま絶対悪即斬言いたかっただけだよね?」

「お前ら、よせ。こいつは団子を届けにきただけだ。オイ、よろ……土方さん。こいつを送ってってやれ」

「言われなくてもそーするよ、オラ、行くぞなまえ」

「だからなまえって呼ぶんじゃねェ!」


しっしっと私を払うような素振りをする銀時(土方)に、私の首根っこを掴み玄関まで引きずる土方(銀時)。この様子だと神楽や新八にバレていないのか?マジ?なんで気付かないのこいつら?それでも従業員なの?万事屋を後にした私たちは、なんとも言えない距離のまま吉原への道を並んで歩いた。少しの沈黙の後に口を開いたのは土方(銀時)の方だった。


「…俺さすがにこの身体でお前にキスとかできねェ」

「私もしたくないから、絶対やめてね」

「お前がこの身体に触れるって考えただけで、マジで怒り狂いそう」

「お前割と容赦無く触ってくるけどな!?」

「……マジ、どーすりゃいんだよ…」


棒付きキャンディを片手にしょんぼりと肩を落とす土方(銀時)につられて私もため息を落として無意味に空に視線を移した。人の気も知らず燦々と照る太陽に思わず目を細めた。つい先日は違いの性別が入れ替わっててんやわんやしていたというのに、今度は中身が入れ替わるなんて。しかもよりにもよって土方。何で土方なんだ。もっと他にあんだろーが。


「オイ、トシィ!こんなとこで何やってんだ!」

「げ、ゴリラ」

「ホントだ、ゴリラだ……ってお前ら何だそのビジュアルは!!」

「お、これはこれは百華の姐さんじゃねェですかィ。万事屋の旦那からトシさんに乗り換えですかィ?」

「お前は沖田か!?」


アホみてーな幟が刺さった大型のバイクに跨るこの愚連隊は、まさか真選組!?万事屋といい、こいつらといいリーダーが変わるだけでこんなにも色々変わっちまうのか!?ジト目で真選組の連中を睨みつければうんざりとしたように土方(銀時)が顎をしゃくった。


「万事屋に頼まれて吉原まで送ってくんだよ。テメーらは屯所戻ってろ、タコ助共が」

「……いや、いいです、ここで」

「へ?」

「何かもう今日は疲れたんで、一人で帰ります」


ぽかんとした表情の土方(銀時)に、なぜか血走った目でブォンブォンエンジンを鳴らす真選組。万事屋連中の豹変っぷりに、銀時(土方)。もう何が何だかよくわからないし、このまま土方の見た目をした銀時と一緒にいたってきっと何も進展はないどころか苛立ちが増す一方だ。ひらりと手を振り土方(銀時)を残して吉原へと帰って行く私に、土方(銀時)の絶望したような叫び声が聞こえた気がした。


「やだァァァァ!!!なまえちゃァァァァん!!!戻ってきてェェェ!!!」


…銀時、それはこっちのセリフです。



・・・・


「月詠〜!日輪〜!うわーん!!」

「うわ、何泣いてんのよあんた!」

「どうしたんじゃ?!何かありんしたか?」

「銀時が土方で、土方が銀時でェェェ」

「何言ってんのかわかんないわよ…って、なまえ!鼻水垂れてるわよ!こっちこないで!」


吉原に戻った私が月詠と日輪に泣きついたのはここだけの話にしといてくれる?



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