Ichika -carré- | ナノ


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「はァ?!中身が入れ替わった!?」


ソファに足を組んで腰をかける私の向かいには、むすっといけすかない表情を浮かべた銀時…の見た目をした土方。心底悲しそうにだらしなく眉を下げる土方…の見た目をした銀時。だあぁぁ!ややこしいわ!


「俺だってなりたくてなったわけじゃねェよ…誰が好き好んでこんな前髪V字ヤローの身体になんか入りてーかよ」

「そりゃこっちのセリフだ。テメーみてェな細胞レベルからだらけきった糖尿病気味の身体なんか真っ平御免だ」

「うわぁ…ただの自虐に聞こえるよ…」


ちらちらと銀時(な土方)と土方(な銀時)を見比べて見ても、外見だけでは中身が入れ替わってることには気付かない。心なしか銀時(土方)の目がキリッとしている気がするし、心なしか土方(銀時)の瞼が普段より重たく見える気がする。…つーか()←これだりーよ!!!ややこしいことになりやがって!


「で、何か心当たりとかあんの?」

「トラックに轢かれた」

「このバカが飛び出してきやがったんだよ!」

「で、何か戻る方法とかあんの?」

「「……」」

「…マジかよ」


はあっとため息をついた私の元に駆け寄る土方(銀時)がおもむろに私の手をガッと掴み眉を釣り上げた。


「なまえちゃん、俺こんな見た目になっちゃったけど平気だよな!?別れたりなんてしねーよな!?」

「ギャー!気持ち悪ィ!!お前その顔と声で私の名前呼ぶな!つーか手握んな!!!」

「オイ!テメー俺の身体でその女に触れるんじゃねェ!見てて気色悪ィんだよ!」

「土方テメー気色悪ィってどーいう意味だよ!?」

「テメーこそ気持ち悪ィって何だよ!?」


食い気味にこちらに前のめりになる銀時(土方)の顔があまりにも腹が立ったので思わず拳を決め込むと、銀時(土方)はまさか殴られるとは思ってなかったのか頬を押さえながら、えっ?えっ?と声を上げている。


「おま、仮にも自分の男の身体に手ェ上げんなよ!」

「そんなの日常茶飯事だ。見た目が銀時であろうと中身が土方であろうと容赦無く殴る」

「わりーな、マヨラーくん。俺らは何でも晒け出せる仲なんだよ、なっ?」

「だからその身体で私に触れんじゃねェよ!!!」


ぐいっと私の肩に手を回してきた土方(銀時)の腕を捻り上げてなぎ倒すと、これまた土方(銀時)も拒絶されると思っていなかったのか腕を押さえながら驚いたように私を見上げている。


「なまえ、これ副長の身体!警察の身体だから!逮捕しちゃうよ?!」

「知らねーよ!だったら私に触んなボケ!」

「……えっ。じゃあ俺、この身体のままだったらお前に触っちゃダメなの」

「そうだね、だって見た目土方だし。何か不快」

「気に障る言い方するんじゃねェよ!だが万事屋、俺もこの女と同じ意見だ。お前俺の身体でこの女に触れるな。周りに見られたらたまったもんじゃねェ」

「……そんな」


眉をハの字に下げてあからさまに落ち込む土方(銀時)の顔が見慣れなくって可笑しくて仕方がない。逆を言えばこんなにキリッとした銀時(土方)の顔も普段見る機会がない。何だか緊張してしまうのは、何故だろうか。じっとその横顔を見つめてしまっていた私の視線に気付いた銀時(土方)がこちらを振り返り首を傾げた。


「…ん?」

「あ、いや、何でもない」

「なまえ!!今俺の顔に見とれてただろ!?忘れんなよ!!そいつ中身マヨラーだからね?!ニコチン中毒のV字前髪瞳孔かっぴらきヤローだからね?!」

「…わ、わかってるよ…」

「オイ頬染めてんじゃねェよ!やめろ!そんなツラでそいつを見んのはやめろ!つーか俺の顔見てんのか!…何なの?喜ぶべきなの!?複雑なんだけど!?!!」

「……ったくうるせェカップルだな」


中身がどんなにハナクソ警官であろうが、やはり外見は銀時なのだ。別に見た目が銀時の好きとかそういうわけじゃないのだが、だからと言って見た目が土方の銀時には何の魅力も感じない。申し訳ないけど。困ったようにふんっと鼻息を吐けば、呆れ顔の銀時(土方)に頭を掻き毟る土方(銀時)。

…何でこう次から次へと色んなトラブルに巻き込まれるんだろう。




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