Ichika -carré- | ナノ


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「ねー銀時、そこのスコップとって」

「おー…ってお前そこ崩れてっから!」

「うわっ!もーせっかくいい感じだったのに」

「俺の方見て、すごくない?うまくない?」


水辺から少し離れた砂浜。カナヅチという悲しい設定を背負った私と銀時は、プラスチックのスコップ片手に真剣な顔で砂を固めながら形を整えていた。特に会話もなく黙々と取り組み出して早30分。遊び終えた月詠たちや全蔵たちがこちらに近寄ってくるなりようやく完成したそれを見て驚いた表情を浮かべた。新八ただ一人がジト目で私たちを睨みつけている。


「「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲じゃねーか、完成度高けェなオイ」」

「もういいよそれ!何なんですかその卑猥物!なまえさんもそのネオアーム何とかって知ってるんですか!?やっぱり知らないの僕だけ!?」

「新八、お前もまだまだってことだよ。さ、全蔵!そろそろご飯にしよー。お腹減ったー」

「そうだな。海の家で何か買ってくるか」

「それなら留守番組と買い出し組に分かれましょう」

「そうじゃな」



・・・・


「お前留守番してろよ!俺となまえの邪魔すんな、イボ忍者!」

「そりゃこっちのセリフだ!テメーは向こうで猿飛と遊んでろ!」

「うるせーから私戻っていい!?お前ら二人で行けば!?」

「「……」」


じゃん負けした銀時、そして全蔵に挟まれながら同じく負けた私はぎゃーぎゃーといがみ合う二人を怒鳴りつけながら海の家へと向かった。海の家につけば鼻をかすめるフランクフルトやカレーの匂いに、お腹がぐぅっと音を出した。メニューを見ながら何を食べようかと悩む私を銀時がじっと見つめているのに気付いて、私は眉を顰めた。


「何ニヤニヤしてんの」

「なまえってさァ、真剣な顔してる時すげー可愛いよね」

「…何言ってんの?酔ってんの?」

「なァ、ちゅーしていい?」

「は?」


本当に少し酔っているのかとろんとした眼差しのまま、んぅっと唇を尖らせて私の顔に接近してくる銀時を私が咎めるより先にどかっと音を立てて全蔵の足が銀時の頬にのめり込んだ。


「ジャンプ侍ィィィィ!!!何してんだテメー!何なの、何考えてんの?まさか俺の存在忘れてんの?何なんだテメーはァ!当てつけか?俺の傷に塩塗ろうってのか?!」

「えっだって今の顔可愛くなかった?お前もすんげぇガン見してたじゃねーか」

「いや、そりゃ可愛い顔しやがってとは思ったよ!?だからってキスしていい?っておかしーだろ!公共の場で何考えてんだ!そーいうのは家帰ってやれ!いや、帰っても腹立つからやめろ!」

「え、何、お前もしてほしいの?」

「何でそうなんだァァァァ!!!!」


「おばちゃーん、フランクフルト2本と、カキ氷5つ。あとイカの姿焼き3つとビール2つ!」

「まいどー」

「で、金はこいつらが払うから。できたらこいつらに渡しておいてくださーい」

「はいよー」


くるっと踵を返して元来た道を歩き出す私の腕をそれぞれの方向からぐいっと引っ張る銀時と全蔵に、はぁっと大袈裟にため息をついて「何だよ」と振り返った。顔を合わせればブーブーと喧嘩をしだす二人にいい加減付き合いきれない。


「お前らさぁ、絶対お互いのこと嫌いじゃないでしょ」

「はァ?ちょっとちょっとなまえちゃん、何言ってんの。無理でしょ、嫌いでしょこんなストーカー邪魔者忍者」

「俺だってこんなバカみてーな頭した寝ぼけっツラの腐れ侍大っ嫌いだ!俺が好きなのはなまえ、お前だけだ」

「オイどさくさに紛れて何気色悪ィ告白してんだよ!つーかお前の方がバカみてーな頭してるゥゥ!」

「ほらっ、何かいつも私差し置いて二人で盛り上がってるよね、仲良いよねお前ら」

「なっ…」

「そ、それは…」

「つーわけで邪魔者は先に戻ってまーす」


掴まれた手を振り払い、さらさらと歩きづらい砂浜を駆ければ後ろからは「もうテメー俺と同じページに立つな!こっちくんな!」「こっちのセリフだ!主人公交代しやがれクソ侍!」とまた無意味な争いをしている二人に心底呆れながら月詠たちの待つパラソルの元へと急いだ。




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