▼ 3/3 ☆
腰を掴み膝を立たせて濡れそぼったそこを勢いよく貫けば、悲鳴にも似た声を上げて悦びを露わにするなまえに思わず短い息が漏れる。
「…い、あっ、あぁっ…!」
「…っく…」
どうにもこいつの身体に慣れることがねェ俺は、挿入直後から放出しそうになる欲をどうにか堪えながら、動くことができずに背中をぎゅっと抱きしめた。傷だらけの背中にはうっすらと汗が滲んでいる。傷に沿いながらその汗を舐めとるように舌を這わして気を紛らわした。
…いつか言ったような気がする。この傷の数だけ愛してやる、と。優にその数を超えたはずの俺たちの交わりは、回数を重ねるごとに愛を育んでいる気がしてならねェ。その証拠にこんなにも抱き尽くしたなまえの身体を未だに欲している。こいつを抱きてェと自分でも呆れるほどに求めている。控えめに腰を動かせば、震え出すなまえが愛しくて、愛しくて。
「…どんだけ、心臓があっても足りねー」
「あっ、…は、…いあっ!あ!」
「ほんと、なんで…こんな好きなんだろーな…っ」
結合部から聞こえるぐしゅぐしゅとした水音に肌と肌がぶつかる音、なまえの嬌声。何もかもが俺の熱を滾らせて敵わない。あーもう、全然ダメ、出そう。
「…ちょっと一回出していー?も、無理…」
「あっ、あぁあ!んっ…あ、いやぁ、…あっ!」
容赦無くその細い腰に自身の腰を打ち付けて、溢れんばかりの欲を太ももに吐き出した。はえーのなんのってもはや笑えないレベルだが、それでも今日はまだイケる。俺もまだまだ若いってことだよなァ。つーかこいつだからこんなにも性欲が湧き上がってくるんだよなァ。不思議な女。呼吸を正してなまえを反転させて覆い被されば、なまえは少しだけ驚いた表情で俺を見上げた。
「…っ、銀時…、ちょっと、少し休んじゃ…だめ…?」
「…ダーメ。言ったろ、煽ったのはお前だって」
「んぁあっ……!」
結局あれやこれやと体制を変えながらなまえの身体を極限まで堪能し尽くした頃にはすっかり日が昇り始めていた。互いに残った体力を失い死んだように眠りについたのは、何度出したかすら忘れた頃だった。
・・・・・
前触れもなくぱちっと瞼を開くと、目の前には規則的な動きをする肌色の何か。
「…っ」
状況が掴めないままその肌色に頭を擦り付ければ、ぎゅっとその肌色に抱き寄せられて呼吸が苦しくなる。
…銀時か、来てたんだ。
なんて頭の片隅でそんなことを思いながらまた瞼を閉じようとした私の脳がじわじわと覚醒を始める。
…ん?肌色?っつーことはこいつ、裸ってこと?起き上がろうにも身体が重く力が入らない。その上頭がズキズキと痛んで思考の妨げをした。
…何これ、ありえねーくらい頭痛いんだけど。風邪でも引いたか。つーか心なしか寒いんだけど。自身の肩を摩ろうと思い腕を伸ばせば、手のひらに触れた素肌に私はまたクエスチョンマークが頭に浮かぶ。
…え、何。私も服着てないじゃん。あれー、昨日なんかあったっけ。いや、あれ?待てよ。私は昨日吉原中の遊郭の大型見廻りだったはず。それには行ったよなぁ。まず一軒目に、お雪さんのところに行って日本酒飲まされて。その次は今人気急上昇の若手遊女の椿ちゃんの相談に乗りながら、また二本目の日本酒をかっ喰らい。その後は、…とにかくわかんないけど、私は無事に見廻りを終えたのか…?
「銀時…」
重い身体を起き上がらせて布団を捲ると、そこには本当に素っ裸で眠る銀時の姿。やっべ、何も覚えてねー。飲みすぎたか?ふと布団の周りにはぐしゃぐしゃに丸められたティッシュのゴミが溢れかえっている。え、なにこれ?そして視線を自身の体に移したところで、私はピシッと音を立てて固まってしまった。
「…なにこれ」
視界に入ったのは胸から太ももまでの間にあちらこちらとつけられた赤い何か。それが何なのかすぐに理解できずに私は二、三度瞬きをして、すぐに傍に眠る銀時の首元を両手で絞め付けた。
「オイ!!!銀時テメー起きろ!」
「…ぐ、えっ…ちょ、えっ!?」
「人が寝てる間に何してくれてんだ、ぶっ殺すぞ!」
「ちょ、…死ぬ、死ぬ…!!」
寝起き早々首を絞められて白目を剥く銀時は、ギブギブと私の手をバシバシと叩いた。力を緩めればすぐに咳き込む銀時を睨みつけながらその頬を思い切り抓る。まさか彼氏に寝込みを襲われる日が来るとは思わなんだ。
「彼女の寝込みを襲うたァどういう了見だ!!」
「ちょ、待っ!!え、何お前昨日のこと覚えてねーの!?」
「覚えてねーよ!!」
「そりゃねェだろ!百歩譲って覚えてなかったとしても、お前が悪いだろ昨日はよォ!!!」
「はァ!?こんだけ人の身体いたぶっといて、人のせーにすんじゃねェ!!」
「お前が銀さんの銀サン爆発させろっつったんだろーがァァ!!ドエロいツラで懇願してきたんじゃねーか!!!」
「銀さんの銀サンって、何だ!SONと掛けてんのか!?息子っていいてーのか!?つまんねーんだよ!私がそんなこというわけねーだろーが!!!」
「いや言うわけねーのは知ってるけど言ってたから!お前泥酔して覚えてねーかも知んねーけど!!!絶対言ってたからね!!!」
ぎゅうぎゅうと頬を抓られながら涙目で無実を訴える銀時に、私は必死に昨夜の出来事を思い出そうと脳をフル回転させてみる。ぼんやりと白いモヤに包まれていた記憶が断片的に思い出される。
『ねぇ、銀時ぃ…』
「……!?」
「あ、お前いまなんか思い出したろ!!」
「いや、そんなわけねー。あれは夢だ」
「夢じゃねェよ!あんだけ人のこと煽っときながらふざけんなよ!だから文句言うなっつったろ!!」
「何にしても泥酔した彼女抱いてんじゃねェよ!!!」
「ぎゃァァァ!!!」
下腹部に手を伸ばしあられもなく晒された銀時の銀玉を思い切り握れば断末魔のような叫び声が長屋に響き渡った。先一週間許可なく私の身体に触れないことを約束して、今回の犯罪まがいな銀時の夜這いを許すこととした。
「いやだから何で俺ェェェ!?!!」
それにしても昨日は飲みすぎた。暫く酒は控えよーっと。
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