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「できたー!!!」
お重の弁当箱4段分綺麗に並べられた唐揚げにタコさんとイモムシさんウィンナー、だし巻き卵に海老フライ。何種類ものおにぎり。所々にレタスやプチトマトで彩られた弁当が、やっとのこと完成した。
「時間はかかったけど結構いい感じにできてるわね」
「三人がかりで4時間かかる弁当って何なんじゃ一体」
窓から差し込む日が眩しいほどの時間になってしまった。だが時間はまだ6時やそこら。このまま万事屋に向かうにはまだ早いかと、ひとまずお茶をすることにした。
「いやーそれにしても大変だね、弁当って」
「二日間もこんなに時間かけて作るとは思わなかったわ」
「まぁ今日は4人分だからな。流石に少し疲れたじゃろ」
「うん疲れたー!てか日輪と月詠がいなかったら1日かかってたかも」
うーんと伸びをして畳に寝転がる私をやれやれといった顔で見つめる二人に笑ってみせた。あー、ほんっと疲れた。でもすごい達成感。人に何かするのってこんな楽しいんだ、知らなかった。全蔵といたときは全部アイツがやってくれてたからなぁ。ほんと銀時といるようになって色んなことを経験してるなぁ。
「なまえ、あんたここで寝ないでよね。寝るなら上行ってよ」
「ところでぬし、屯所は誰が見ているんじゃ?」
「……やべぇ」
弁当作りに一生懸命になりすぎて仕事抜けてきてたの忘れてた。急いで作った弁当を重ねて風呂敷に包み、それを抱えて二人にお礼を言った。
「ごめんね、遅くに押しかけて。でもほんと助かった!ありがと」
「少しは寝なさいよ。クマすごいわよ」
「地上に上がる前に一声かけていきなんし」
ひらりと二人に手を振って急いで屯所に向かえば、呆れた顔の団員たちに迎えられた。脇に抱える弁当を指差されて説明すれば、ぷっ!と吹き出す団員たち。
「何がおかしーんだよ!?」
「副頭、ここのとこめっきり女の子ですね」
「副頭が弁当…!ぷっ、可愛いんですけど!」
「オイ、ぶっとばすぞ!!!」
銀時が絡むとなると団員たちは嬉しそうに…いやこれは完全に楽しんでいる。だって後ろの方のやつ肩震わせて笑ってんもん!!何なんだ!せめてもっと咎めてくれよ!仕事サボらないでください!とかなんとか言って責めてくれよ!!
「あ、それは気にしないでください。いつも通り特に何もなかったですよ」
「…悪かったな、今日は人が少ないっつーのに」
「いいですから!ほら、副頭早く帰って寝ないと寝坊しちゃいますよ」
「お前ら…」
「この埋め合わせは高天原でしてくださいね」
「オイィィィィ!!!完全にホストにハマってんじゃねーか!!!」
ったく現金なやつらだ。とまぁ私に非があるのだからハイハイと曖昧に頷いて、これまた急いで自宅へと向かった。家に着いた頃にはすっかり辺りは明るくなっているし、これじゃほんの2時間足らずしか眠れない。それでも寝ないで行くよりはマシだろう。急いだ寝間着に着替えて布団に潜り込んだ。
疲れたけど、楽しみだなぁ。喜んでれるといいなぁ。銀時の喜ぶ顔より神楽と新八が喜ぶ顔の方が容易に想像できて思わず口元が緩んでしまう。そんな妄想もそこそこに私はすぐに眠りについてしまった。
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