Ichika -carré- | ナノ


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「ところでデコボッコ教についてわかったことはあんの?」


銀子♀といるときはついつい元々の口調に戻ってしまう。オネェ口調やめろ、と私をジト目でみる銀子♀はがたっとノートパソコンなるものを見せつけてきた。


「今わかってることは今までも地球以外の星が標的にされてきたらしいってこと。ただ次の標的がどこの星になるのかってのがわかんねェ」

「ふーん。じゃーそれがわかるまでこのままってわけか」

「…ったくふざけんなよなァ。何でイイカンジな世界になっちまってんだよ」

「でもさぁ。私がこのまま働いて稼いで、お前は今まで通りぐーたらしてる方が周りからの目も痛くないんじゃない」

「……」

「女だしね、みたいな目で見てもらえるじゃん」

「……」


何でこいつ「アリかも!」みたいな顔してやがんだ!プライドねーのか!はっと我に帰った銀子♀は「いや、ダメだ!俺はお前とヤリてーんだよ!」と何とも愛の欠片もないセリフを吐くもんだから問答無用でおでこを小突いた。まぁ性別が入れ替わっている今、今まで通りに殴ったりできない分少しストレスが溜まってる。私の不満はそれくらいだね。うん。


「それにしても十兵衛♂。あいつにとってはいい世界になったんじゃねーの」

「アレ、お前十兵衛♂と知り合いだったっけ」

「こうなる前から月詠から話は聞いてたから。…あ、今は月雄♂ね」

「訂正しなくたってわかるわ!」

「あの子、私らには申し訳ないことしたって。結構落ち込んでるみたいなんだよね」

「…手放しで喜んでる奴は誰一人いねェってことか」


スーツのジャケットを脱いでネクタイを緩める私をまたもジト目で見つめてくる銀子♀に苦笑いをして、冷蔵庫からビールを取り出せばすぐにそれを飲み干した。

…そんなのは当たり前だ。私だってもう戻れないんだろうと諦めているだけで、今の状況がいいだなんて思っているわけないじゃんか。いつまで経っても股のコレは慣れないし、ヒゲも生えるし、何か道行く女にキャーキャー言われるし、相方もほぼ同じ顔した男だし。双子みたいで気持ち悪いし。それにいつまで経っても銀子♀の顔は見慣れないし、でかい胸が腹立つし、数週間しか経っていないというのにもう元の銀時の声も顔も忘れそうになる。そんなの、少しも。


「……いいわけないじゃん……」

「うぉ!何泣いてんだ!つーかお前泣くな!そのツラで泣くな!キショイ上に慰めようにもどうすることもできねーから!お前いまなまえ♂だから!」

「私だって、銀時に会いたいもん。銀子♀じゃなくて、銀時♂じゃなきゃ嫌なんだもん…っ」

「だからァァァァ!!!そのツラで、もんとか言うんじゃねェェェ!!!」


私だってこんな見た目でこんな声でこんなこと言いたくない。だけど、本当は限界なんだよ。すっかり距離ができてしまったこの関係が、苦しくて悲しくて、どうしようもないんだよ。…私だって戻れるなら、戻りたい。元の私たちに戻りたいよ。


「なまえ♂…いや、なまえ。俺を、銀時♂を信じろ。必ず元の姿に戻れる方法を探す。だから泣くなよ」

「銀時ぃ…」


ボロボロと涙を流す私に、銀子♀は優しく笑って見せた。銀時♂のときと何も変わっていないその笑顔に、私の涙は更に溢れ出して大きく頷くことしかできなかった。そして思わず銀子♀を抱きしめた。


「だからその顔で近寄んないでェェェ!!!!!」





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