Ichika -carré- | ナノ


▼ ご乱心のアイツ♀ 1/2



「帰ったぞー」


しんと静まりかえる真っ暗な室内に、響き渡る声。 いないのか、なんて思いながら電気をつければそこには真っ黒な空気を漂わせて体育座りをする一人の女。虚ろな瞳がこちらを捉えるなり、思わず笑みがこぼれた。


「…どうしたんだ、電気もつけねェで」

「…」

「どうした、なんかあったのか?」

「……」


体育座りをする彼女の元へ近づいて、同じ目線まで腰を落として柔らかく髪を撫でた。癖っ毛のその髪はぴょんぴょんといたる方向に跳ねている。そんな俺の手を振り払うとその女、くわっと眉を釣り上げて俺の胸ぐらを掴んできた。


「どうしたもこうしたもあるかァァァァ!!!!いつまで俺は女のままでいなきゃいけねーんだ!!いつまでお前は男のままでいるんだァァァァ!!!」

「落ち着けよ銀子♀、もうその話はやめようぜ」

「やめねェよ!何でテメーら受け入れちゃってんの!?結構満更でもねェ感じなの!?意味わかんねーよ!!!」


こんにちは。私は作中でヒロインだった百華副頭領のなまえです。前回デコボッコ教の人工衛星カミサマから特殊なホルモンバランスを操作する薬によって、性別が男になってしまったのはもう数週間前の話。戻れないと知ると何だかもう受け入れざるを得なくって、割と普通に生活を送っています。そしてこの女、私の恋人の坂田銀時。…だった坂田銀子♀。同じく性別が変わって女になってしまってからというもの、うちに引きこもり必死にデコボッコ教について調べている。どうにか戻れないかと方法を模索している次第だ。


「銀子♀、もう諦めろ。お前以外のやつは意外と型にはまってんだ」

「テメーら変態と一緒にすんじゃねェ!俺は自分に乳や穴がついてても嬉しくねーの!お前の乳と穴だから興味あんの!好きな時に拝める女の裸に価値なんかねーんだよ!!」

「お前こそ身体の話しかしてねーじゃねーか!変態はどっちだ!」


私や月雄♂を含めた百華、まん選組♀、猿飛♂に神楽惇♂。柳生十兵衛♂。あの日性別が戻らなかった私たちは、意外と今の生活に満足している。私らは吉原のみならず、かぶき町に進出して風俗業界を牛耳る真 夜王として活躍をしているし、まん選組♀はミニスカポリスというB専キャバクラで働いてるし。一番隊長だった総子♀は変態アドバイザー猿飛♂と総子太夫としてかぶき町一の花魁として名を馳せている。神楽惇♂は…


「もういいよその解説!誰も得しねーよ!!」

「いつまで経っても過去に縋ってんのはお前だけだ、銀子♀」

「あたりめーだろ!この身体になってから一回もセックスできてねーんだぞ!朝起きたら隣にいんの銀さんよりイケてる二枚目の男だぞ!?そりゃ縋りたくもなんだろ!」

「お前もう身体のことしか文句言ってねーじゃねーか」

「とにかく、俺はなまえ♀とセックスがしたい!銀子♀じゃなくて銀時♂でお前とセックスが」

「結局セックスにしか重き置いてねーんじゃねーか!!!」


みなさん知っての通り私たちは恋人同士。この身体になってからというものギャーギャーと喚く銀子♀を宥めながら何度か試してみた。…だけど現実はそう甘くはない。


『オエッ、やっぱ無理』

『私も無理!女の身体に自分のコレ入れるなんて無理!いつもされてんのになんか無理!』

『俺だってヤローのち●こ入れられたくねーよ!気色わりーよ!つーかそのツラと声でその喋り方やめろ!!』

『銀時、諦めよう』

『だからそのツラと声で銀時って呼ぶんじゃねー!!』


とまぁ、こんな具合に何度となく失敗してきた。互いの身体を見るだけで吐き気を催してしまうのだから仕方がない。そのせいで布団も別々だし、お風呂なんてもってのほか。単なる同居人のような関係を続けているが、銀子♀はどうにも納得できないようだ。ネットでデコボッコ教について調べてみたり、地上にいるらしいカラクリに詳しいジーさんにあたってみたりしたものの、解決策は未だ見つかっていないらしい。もはや私たちの間で性別についてとやかくいうのは銀子♂しか残っていない。あ、あと]子♀。]子♀はミニスカポリスに働き始めてからというもの、全蔵という太客に指名されているもんだから今は結構稼いでるはずなのに、如何せんあのビジュアルになってから町中で後ろ指を指されることが増えたそうだ。



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