▼ 14話振りのアイツ 1/2
「お前さんが旅行ねぇ」
「意外と楽しかったよ」
旅行から帰った二日後、久しぶりに全蔵から電話がかかってきた。仕事中だった私が抜けれたのは丁度昼時の時間で、都合がいいと地上のファミレスに呼ばれやってきた次第だ。最後に会ったのは愛染香の時、話数にして14話振りの再会だが、特段変わった様子はない。先日の旅行の話を身振り手振り説明すると、地上に上がりたがらなかった私が旅行など、と全蔵は驚いている。「…ところで」と私の話を止めた全蔵は、私の隣に視線を移すとビシッと指をさした。
「何でテメーまでここにいるんだよ!」
全蔵はパフェを頬張る私の隣で、同じくパフェをかっ込んでいる銀時に声を荒げた。
「あたりめーだろ!彼女略奪しよーとした元カレと二人で会わせる彼氏がどこにいんだよ!」
「言っとくがテメーのパフェは奢らねーぞ!」
「あァ!?ボンボンがケチくせーこと言ってんじゃねェ!んなんだから振られんだろーが!!」
「何だと!?」
顔を合わせればいがみ合う二人を殴りつけて黙らせれば、ふんっと合わせたように顔を背け合う。仲良くしろとは言わねーが、公然で怒鳴り合うのはやめてくれ。いい歳こいた大人が恥ずかしい。
「てゆーか、何の用なの?昼飯一緒に買いたかっただけ?」
「それもそうだが。…ホラ、これ。バレンタインのお返しするの忘れたろ」
「えっ!ウソ!全蔵、これ!!」
「ビッチの新作のバッグだ、やるよ」
「マジで!?やったー!ありがと……」
「ちょっと待てェェェ!!!!」
ガサッと全蔵が手渡す紙袋を受け取ろうと手を伸ばすと、すかさず横から銀時の腕が伸びてきて私の手を制止した。
「オイ!テメー何他の男からプレゼントもらおーとしてんだよ!?しかも彼氏の前で!デリカシーなさすぎんだろーが!!」
「物に罪はないだろ!!!つーかお前にデリカシー云々言われる筋合いはねぇよ!!!」
「こいつが選んだバッグ使うなんて無理!絶対無理!銀さんそういうの無理だったってんだろ!」
「全蔵が選んだものだろーがビッチはビッチ!しかも新作!もらわない理由はない!」
私の手を遮る銀時をあしらって紙袋を受け取ると、全蔵は心なしか勝ち誇ったような顔をしている。何でそんな表情ができるのか意味がわからないし、めちゃくちゃ悔しがっている銀時も意味がわからない。ただバッグをもらっただけだろーが。
「お前の財力じゃビッチのバッグ買うなんざ何年かかることやら」
「…くっ、テメー金に物言わせやがって…!言っとっけどなァ。俺らこの旅行中五回セックスしたんだからな!」
「テメーはでけー声で何言ってんだ!!!」
咄嗟に銀時の横っ面に拳を飛ばすも、何故か今度は銀時が勝ち誇ったような顔をして、全蔵が悔しそうに下唇を噛みしめている。何なんだよそのくだらねェ勝負!やめろ、他の客が不審そうにこっち見てんだよ!やめてくれ!
「…くそ、底なしの絶倫侍が…!」
「意味わかんないし、それ。褒めてるみてーじゃん」
「オイ腐れ侍…俺は昔コイツに×××と○○○で***を…!」
「テメーも何言ってんだァァァ!!!」
数本のフォークを全蔵に打ち込みこの不毛すぎる勝負を無理やり終わらせて、突き刺さる視線に耐えきれずにファミレスを出ることにした。
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