▼ 2/3
瞳に涙を浮かべながら、嬉しそうに私を取り囲む団員たちに、私は流れる涙を抑えきれなかった。いつからこんなに立派になったんだろう。さながら子の成長についていけない親の気分だ。
「副頭、心配しましたよ!どこをほっつき歩いてたんですか!」
「あれから大変だったんですよ!」
「ごめん、本当ごめん」
謝る私に気にするなというように笑顔を向ける団員の一人が「頭ァ!」と声を上げた。つられて月詠の方は目をやると、相変わらずこちらに背を向けたまま動こうとしない。
「頭!いつまで強がってるんですか!早くこっちきてください!」
団員の言葉にゆっくりとこちらを振り返った月詠の顔を見て、私は拍子抜けしてしまった。眉を下げボロボロと涙を流す月詠は、私と目が会うなりがばっと抱きついてきた。
「よかった…なまえ、もう二度と戻ってきてくれないかと…もう二度と会えないかと。本当によかった…」
「月詠…」
「泣くほど嬉しいなら、最初からあんなこと言わなきゃよかったじゃないですか!」
「だって、一応わっち頭だし…形式上ちゃんとやらないと示しがつかないし…でも、ぬしらが処罰を下すなんて言ったら、どうしようかと、ヒヤヒヤしんした…」
私に抱きついたままぐすぐすと泣き出す月詠につられて、私の涙はさらに量を増して溢れ出した。心配かけていたんだね。たった一週間でこんなに痩せちゃって。どんな気持ちでこの一週間を過ごしていたんだろう。考えただけで胸が張り裂けそうになる。私の身勝手な行動で、心配と迷惑をかけ、こんな嫌な役をしてまでしっかりと百華の副頭を務めた月詠には、本当に謝っても謝りきれない。護られているのは、いつだって私の方だった。
「月詠、ごめんね、…ごめんね」
「謝る必要はありんせん。わっちこそ、処罰がなんだと偉そうに、すまなかった。わっちが一番ぬしを処罰する気がないというのに。すまなかった…」
しばらく抱き合い涙を流す私たちに、団員は呆れたような、はたまた安心したような表情でそれを見守ってくれていた。心優しい相方に暖かい仲間に囲まれて、私は本当に幸せ者だ。私は本当に、この町が好きだ。私を取り囲む全てが、私の宝物。何にも変えがたい大切な宝物なのだ。こんなときになって、ようやくそれを実感した。
「ぬしら、今夜は宴じゃ!なまえが帰ってきたんじゃ、朝まで飲むぞ!」
「……いや、頭。頭は飲まないでください」
「…………そうじゃな」
prev / next
bookmark