Ichika -carré- | ナノ


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「何なのこのメンバーは?めんどくささしかないんですけど」


いつにも増して爆発頭の銀時は、ベッドの傍らに座る私の後ろに隠れながらジト目で全蔵と猿飛を睨みつけた。


「つーか何で全蔵がここにいんの?」

「俺は痔の本格治療しにきたんだよ」

「テメーは頭の本格治療した方がいいと思うぞ」

「メス豚モードON!銀さんの治療はさっちゃんに任せてだぞ!」

「猿飛ィ、俺にも飯くれよ。ケツが痛くて動けねーんだ」

「始末屋モードON!」

「ぎゃぁあぁあ!」


猿飛が全蔵のケツにチクワを突っ込んだりろうそくを突っ込んだり、銀時を縛り付けたりと病室で好き放題暴れていると、婦長が眉を吊り上げて猿飛を引きずり連れて行ってしまった。ようやく静かになったところで、仕方なしにリンゴでも剥いてやるか。


「なまえ、チョコとかねェの」

「言うと思ったから買ってきたよ」

「さっすがマイハニーちゃん、気が効くね」

「なまえ、俺うさぎのリンゴがいいんだけど」

「テメーにゃやんねーよ!何どさくさに紛れてつまみ食いしよーとしてんだ!つーかそれ俺のジャンプ!」


私を挟んでバチバチと散る火花を見て見ぬ振りをして、携帯を開いた。月詠だって心配だったはずだろう、バカは元気そうです、と一言メールを打ってギャーギャーといがみ合う二人に目を向けた。…なんだかんだこいつら結構仲良いよなぁ。どことなく似てるし。ベッドに腰掛けていた私の胴廻りに突然腕を回した銀時は、おもむろに私の身体を引き寄せた。


「そーいやお前に聞きたいことがあんだけど」

「何、改まって。つーかわざわざ全蔵の前じゃなきゃダメなの、それ」

「コイツも踏まえて、白黒はっきりさせなきゃなんねーんだよ」


銀時は私の肩に顎を乗せながら、不満そうな声を上げた。向かいの全蔵も何のことかと首を傾げている。


「お前コイツに、ずっと一緒にいようね、とか言ったの」

「……え?」


眉を顰めて銀時に目を向けようとするも、視界に入るのは銀髪の癖っ毛だけだ。次に正面の全蔵に目を向けると、何やらニヤニヤと勝ち誇ったように笑っている。その質問の意味を少し考えたが、ピンとこない。何を言ってんだ、このバカは。


「何のことですか」

「コイツが言ってたんだよ!付き合ってた頃にお前に言われたって!ふざけんなよ、俺にはんなこと言わねーくせによ!」

「言ってねーけど」

「はァ?!オイ、待てよ!いくら終わった関係とは言え、そりゃあねーんじゃねェの!絶対言ってたからね!」


今度は全蔵が噛みついてくる。何のことか皆目検討もつかない。そもそも私はそんなこと言うようなタイプの人間じゃないし、どこかの女と間違えているんじゃないだろうか。ずっと一緒にいよう?そんなこと……。


「………はっ!!」

「な、言ってたろ?」

「そんなよーなこと言ったような、言ってないよーな…」

「えェェェ!!!マジでか?!マジでんなこと言ったのかテメー!!」

「待って、言ったかもしんないけど…!」

「ハイハイ、どーせ銀さんよりこのクソ忍者の方が好きだったんだろ。俺にはそんなこと言わねーもんな」

「いやだから、違くて!!」


「坂田さん、服部さん、診察の時間ですよー」


オイ、何つータイミングで入ってくるんだ婦長。それより先に弁解をさせてくれ!私を振り払い婦長の後に続こうとする銀時を呼び止めるも、完全にへそを曲げている銀時はチラリと私を目をくれるだけで足を止めてはくれなかった。


「言い訳なら聞かねーから!もう知らねーかんな!!」


とうとう病室を出て行ってしまった銀時に続こうと全蔵が立ち上がったところで、私は思い切りそのケツに蹴りを決め込んだ。本日何度目かの全蔵の悲鳴が病院内に響き渡る。


「お前のせいで誤解されただろーが!何紛らわしい嘘ついてんだ!」

「嘘なんかじゃねーだろ!確かに言ってただろーが!」


確かに言った。そんなようなこと、言ったことがある。それは嘘じゃない。だが、その出来事をピックアップするには少々前後のやりとりが不足している。あれは確か、私と全蔵が付き合い始めてから少し経ったある日の我が家で起きた出来事だ。


・・・・・



『全蔵、まさかその手に持ってるものは!』

『そのまさか、だ。今日新発売のドラ●エX!どうだ、参ったか』

『ギャー!!!』

『頭が高いぞ、なまえ!』

『全蔵様ー!!この私めにできることがあれば何でもいたします!どうか…どうかお納め頂けないでしょうか!』

『うーむ、よろしい!とくと楽しむがよい!』

『キャー!全蔵様ー!この私め、全蔵様に一生ついていきます!!!』

『はっはっはっはー』



・・・・



「どう考えたって小芝居だろうがァァァ!!!…あれ、全蔵!!?ちょっと待てコラァァァ!!!」


もれなく私の怒号も病院内に響き渡ったのだった。



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