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「まさか真選組の方々とは思わなかったわー失礼しましたぁー」
「何で棒読みなんだよ!?オイ腐れ天パ!テメーの女の教育どーなってんだよ!?」
「媚び売るところとそうじゃないところはちゃんと区別できんだよね、やっぱ吉原の子だから。多分ゴリラには擦り寄ってくと思うよ」
「土方は吉原来たことあんの?今度案内してやるよ」
「どんどん土方さんの殺意メーターが溜まってくわァ!何なのコイツ!?」
何やかんやで私たちの席に座り込む真選組の二人組。前髪V字ニコチンが土方、美形の少年は沖田だそう。噂には聞いていたが、真選組とやらをお目にするのは初めてだ。もっとお堅い連中なのかと思いきや、意外と砕けているようで安心した。
「こんな女が吉原の自警団やってるたァな」
「こんな女だから務まんのー、バーカ土方バーカ」
「…もう嫌。俺この女嫌。」
「すげー。鬼の副長が負けてる」
「初対面でここまでズタボロに言われる土方さんも珍しいや。大体どの女もキャーキャーうるせェんですがね」
「私すかしてる男好きじゃないから。ちょっと頭のネジが数本足りてない系が好きなの」
「それ褒めてないよね?」
パフェを平らげた私は、苦笑いを向ける銀時にぐっと親指を立てた。と、真選組の二人は時計を見るなり立ち上がった。
「こんなとこでバカップルに付き合ってるほど、俺らは暇じゃねェんだ、行くぞ総悟」
「いや結構付き合ってくれてたよね?!コイツが食べ終わるまで待っててくれてたよね?!何ならちょっといいヤツだよね?!」
「つーわけで、旦那、百華の姐さん、失礼しやすぜ」
「私らも一緒に出よっか」
立ち上がった二人につられて、私と銀時も立ち上がる。レジに向かうと銀時は私の手にあった伝票を取り上げて、すかさず土方に差し出した。
「副長!ごっつぁんでーす」
「ふざけんじゃねェよ!俺ら何も食ってねーだろォ!」
「俺の女と同じ席に座れただけで十分だろ!むしろ足りねーくらいだわ!」
「そんなお高い女に見えねーぞ、テメーの女!!」
「まぁまぁ土方さん。ボロカスに言われる土方さんが見れて楽しかったんで、ここは土方さんが奢ってやったらどうですかィ」
「それ俺何も楽しくなくね?!むしろいじめに近くね?!」
「副長さんごちそうさまでーす」
「何なんだテメーらはァ!!」
律儀に一人一人へ完璧にツッコミきった土方は、もう少し渋るかと思ったが、意外とすぐに折れて本当にご馳走してくれた。「領収書は近藤勲で」とか何とか言っていたけど、ご馳走してくれたことに変わりはない。ぞろぞろと店外へ出るなり、私は素直に頭を下げた。
「ご馳走さま、土方」
「何だか素直に受け取れねェのは、俺がわりーのか…!?」
「んじゃ、もう邪魔すんじゃねーぞ、ポリ公ども」
「腐れ天パ、次会うときはテメーの命日だと思え」
ひらひらと手を振りながら、真選組の二人と別れた私たちは、ふらふらとかぶき町の町を歩いた。何かバカっぽいヤツらだったけど、悪いヤツらじゃなかったな、うん。次会った時は吉原のサービス券でもくれてやるか。
「次は?どっか行きたいとこねーの」
「えー別にない」
「買い物とかしねーの、女ってそーいうの好きじゃん」
「女モン買うのは吉原が一番いーんだよ。流行りのモン入ってくんの早いし」
「じゃーこのままうち帰るけど」
「いーよ」
今日は一日休みなのだから、あちこち見て回ればいいのかもしれないが、生憎私はショッピングとか何とかにあまり興味がない。前途したように着物やら何やらは吉原で買う方が安くて種類が豊富だ。さすが遊郭ともいうべきか、そういったところは吉原のいいところでもある。相変わらずもどかしい距離感のまま、私たちは万事屋へと向かった。
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