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屯所に戻った私はその場にいた団員たちに銀時のことを報告した。団員たちは言い終わるより先に、わあっと笑顔で私の元へ駆け寄ってきた。つーか何で私こんな報告ばっかしてんだ。浮かれてるみたいじゃねーか。
「「副頭ァァァァァ!!」」
「うぉっ!」
「おめでとうございます!」
「よかったです!またあの頃のアホ…可愛い副頭が見れるんですね」
「可愛いアホヅラの副頭おかえりなさい!」
「オイ待て、アホヅラっつったの誰だ、コラ!」
キャッキャと私を囲う団員に、たじろぎながらも嬉しそうに笑うこいつらの顔を見ていると、やはりこうなってよかったのかもと思い直した。月詠は少し離れた場所で煙管片手に微笑みながらその様子をを見つめている。ようやくそこから抜け出したところで再び聞こえた携帯の着信音に、電話を取った。
「はいはい」
『よう、えらく遅いご出勤だそうで』
「ほっとけ。わざわざ屯所まで来るなんて、なんかあったの?」
『近くに寄ったもんで、顔でも見ようと思っただけさ』
電話の相手は全蔵だった。先日なんだか気まずい雰囲気で別れてから、一度も連絡をとっていなかったが本人は何も気にしていないようで安心した。
「そーだ、私もあんたに用があるんだよ。夜少し会えない?」
『珍しいじゃねーか、お前さんがそんなこと言い出すなんて。なんかあったのか?』
「いや、うん、まぁ。話さなきゃいけないこともあるし」
言葉を濁す私を察して電話越しでは深く追求してこない全蔵と約束を取り付け、早々に電話を切った。こういうところは、本当にやりやすい。長い付き合いなもんで、互いの性格を熟知しているのだ。私たちは当時から随分とクールな関係だった。それは今も変わらない。復縁を要求してくるところを除いて、だけど。一方どっかの白髪さんは欲に従順で、随分と子供っぽい性格だ。それでもそんなやつに翻弄されているのだから、私も物好きなのかもしれない。
「副頭、何ニヤついてるんですか」
「うっせーバカ!」
やかましい団員を振り払い、私は見廻りへと出かけた。何だか最近は随分と平凡な日々を過ごしているなぁ。仕事に明け暮れ、合間を縫って想い人と逢瀬を重ね、温かい仲間と友人に囲まれ、まるで何の面白さもない平坦な人生を歩む少女漫画を読んでいる気分だ。つい数ヶ月前まではジャンプ漫画さながら、鳳仙の下で日々処断に飛び回り、切った張ったの色気のない日々を過ごしていたというのに。ここ最近の吉原は、地雷亜の一件から随分と静かになっている。それもまぁ、日々こうして見廻りをしながら、目を光らせる私ら番人のおかげであることは間違いないのだが。
「こういう毎日も、悪くないもんだなぁ」
なんて、独り言をこぼしてしまうほどに、私の心は温水に浸かっていた。
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