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「ずっと気になってたんだけど」
「あ?何が」
服も着直さずに布団にくるまり、銀時の胸に抱かれながら、私は銀時の規則正しい鼓動を感じていた。
「私のどこが好きなの」
「……は」
「何で私なの?」
それはずっと聞きたかったこと。人に好かれるようなタイプの人間じゃないことは、私自身がよく理解しているつもりだ。それなのに、何故わざわざ私を選んだのか、ずっと気になっていた。至極真剣に問いただす私に、銀時も悩むことなく真剣な声色を向ける。
「顔」
「…は!?」
「え、いや、だから何が好きなのって、顔がタイプなの」
「何それ」
「お前が聞いてきたんだろーが!じゃあ何だったら納得すんだよ!」
いやまぁ、それはそうなんだけど。だからと言って、顔って、何だそれ!別に悪い気はしないが、なんかこう、もっと他にあんだろ!
「まぁ最初は顔から入って、お近づきになりてーなとか思ってたのに。中身全然可愛くねェし」
「…あ、何かもういいや、聞きたくない」
「鼻ほじってるし、口は悪ィし、団子ばっか食ってるし、ゲーマーだし、胸小さいし」
「いやだからもういいって!心折れるわ!」
「でも何か気になっちまうんだよ。昨日会ったのに、何か知らねーけどまた会いたくなっちゃったりして」
「…」
私の頭を撫でながら、銀時はそのときのことを思い出しているのか、浮わついた声で語り出した。胸から響く銀時の声に、私は瞳を閉じて耳を傾けた。何だか、そわそわする。
「でそんな日々を送ってるうちに、あれ?まさかこれって、銀さん柄にもなく恋してない?って気付いたワケ」
「…ふぅん、あ、そう」
「地雷亜のことがあったとき、それが確信に変わった。お前の命が危ねーかもってわかったとき、マジで焦った」
「…わかった」
「でお前俺のことなんか好きっぽい雰囲気醸し出してたじゃん?これはチャンスと思って、ちょっと積極的になってみたんだよ。あの忍者の存在も危ねーし、ウカウカしててとられたら堪ったもんじゃねェし」
「…わかった、もうわかったから」
「…何でお前、自分で聞いといて、恥ずかしくなってんの、バカなの?」
「うっせー」
ゴロンと私を寝返らせ、肘をついて私に覆い被さると、額、頬、唇と順にキスを落とした。顔にかかる髪の毛がくすぐったくて、笑いながらそれを避けると、銀時も優しく破顔して、もう一度唇にキスをした。
「仕事がねェときはここくるから、お前も休みんときはたまにゃうちこいよ。神楽たちも喜ぶし、銀さんも喜ぶ」
「銀時、お前は仕事がねーときしかなさそうなんだけど、そこら辺はどうなの。毎日こなくていいから」
「んでだよ、お前さァ、普通付き合いたてのカップルっつーのは、どんなに短い時間でも一緒にいたいもんじゃねーの?!」
「私はもう大人だから、そこらへんは割り切ってるから平気」
「俺は毎日でも一緒にいてーんだよ!」
「お前が毎晩部屋空けたら、神楽が一人になっちまうだろーが!それでも大人か、お前は!」
「……」
しょんぼりとした顔で私を見下ろす銀時に、少しだけ同情をした私は、はあっと大袈裟にため息をついた。
「…週二回くらいならきてもいいよ」
「間をとって四回にしない?」
「何の間をとったの、それ?」
一向に結論の出そうにない議論に付き合っていたら、いよいよ明日寝坊してしまう。ていうか、もう日が出てくる時間だ。ブーブーとうるさい銀時を横に退かして、また銀時の胸に顔を埋めて瞳を閉じた。
「おやすみ」
明日からは、今までより少しだけ、世界が色づいて見えそうだ。
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