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悲恋になっています。苦手な方はご注意ください。




「 ねえ、私の彼氏にならない?」クラスの仲のいい男子である菅原くんにそう言ったのは高校3年になる前の桜の花が咲き始める時期だった。

席も前後で、たくさん話すうちに私は菅原くんに惹かれていった。


数秒後に「いいよ」なんて答えが返ってくるなんて誰が予想しただろう。そんな会話から私たちは付き合うことになった。


「スガー!宿題みせて!やるの忘れてた…」

「みょうじまたかよ…はい、ちゃんとしてこいよ〜」


「はーい!ありがとね」


私たちが付き合っているということはクラスの人には内緒にしている。
私が内緒にしてほしいとスガに頼んだのだ。
私たちの関係を知っているのは、私の隣の席でニヤニヤしている澤村大地 と 清水潔子という美女だけである。

この2人には私がスガに告白するまでに沢山協力してもらったから一応報告だけはしたのだ。
にしても、私とスガが話すたびにニヤニヤするのはやめてくれ澤村くんや…。


「………よし、でーきた!」


澤村くんを無視しながら宿題を済まし、スガにノートを返そうとしてスガの方を見るとそこにはクラスの女子と楽しそうに話す姿。


スガはあの顔で、優しい。少女漫画のヒロインが1度は惚れるであろう男の子の典型的な例である。
表向きには彼女がいないことになっているため女子が沢山近寄ってくる。

私は束縛されたくもないし、束縛したくない性格だから他の女の子と話していようとあまり気にならない。そう、"あまり"気にならない。

でも、


「こうちゃんこうちゃん!次の時間当てられるんだけど教えて〜」

なんて、甘い声を出しながらスガにまとわりつく女子。スガは嫌な顔一つせず一緒に問題を解いている。

私が付き合っていると言えば丸く収まる。でも、言いたくない。でも、他の女子と近づきすぎてほしくない。矛盾しすぎていて自分でもわけわからなくなる。
自己中でわがままで仕方ない女だなぁと我ながら思う。


そして、スガはバレー部副主将。これからIH予選でどんどん忙しくなる時期だ。
今までも忙しくて放課後や休日を一緒に過ごしたことなんて無いに等しかった。


スガの好きなことは邪魔したくなかったし、私が我儘を言うことでスガを縛り付けてしまうんじゃないかと考え出してしまう始末だ。


そして、部活に向かうスガを止めて、私は結局、自分にとっては最悪な決断をしてしまった。


「スガ、別れよう?スガが悪いってわけじゃないよ、私が全部悪いの。ごめんね彼女らしいことしてあげられなくて。無理やり付き合ってもらっちゃってありがとう」


「そっ……か……。うん、みょうじが別れたいなら別れよう。みょうじだけが悪いわけじゃないべ?でも、今まで通り仲良くしてくれよな!」


そう話すスガはいつも通りの笑顔で。
好きだったのは結局私だけだったのかな、なんて。


「もちろん!これからも友達としてよろしくね」


そう話す私の声は震えていなかっただろうか。私の顔はちゃんと笑顔だっただろうか。


部活へ向かうスガの背中を見つめながら一粒の涙が頬を伝っていた。

笑えてましたか?
明日あったらちゃんと笑顔で挨拶をしよう。