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私の前の席のピンク頭は授業中にもかかわらず爆睡している。
このピンク頭の正体は、青葉城西高校男子バレー部所属の花巻貴大。
顔や身長に似合わず、好物はシュークリーム…らしい。

全て私の友人から仕入れた情報だから、信じるかはあなた次第だ。

英語の先生は緩いことでお馴染みである意味お昼寝タイムだ。
全国を目指せるような強い部活に所属している花巻は少しの時間も惜しいようで睡眠に回しているみたいだ。
寝る子は育つとよく言ったものだが本当にその通りだなあと思う。

あ、チャイムが鳴った途端起き上がって購買にパンを買いに走りだした。
爆睡していたみたいなのになんでチャイムは聞こえるんだろうという疑問をいつ投げかけようか私はタイミングを伺っていたりする。

今日もまた聞けずに、友人とのお昼ご飯に入る。
友人曰く「花巻はさ男友達としては良い奴だよね」だそうだ。
しかし、花巻は私の中で結構謎である。

そんな最近私の中で話題の花巻はお昼休みが終わると教室に戻ってきて古典の準備を始め出した。
古典の先生は厳しいことで有名だから寝るという選択肢は彼の中にないようだ。

放課後になるとチームメイトである松川が迎えに来て、部活へと向かうのが彼の日常なのだと思う。
そんな彼らと友人を見送って帰宅部の私は帰路につく。いや、つこうとした。

「おー、みょうじ良いとこにいた。」

「先生…」

「これちょっとうちのクラスの花巻に渡しといてくれ。これから職員会議で俺行けそうにないから」

「えっ、ちょ」

「頼んだぞー」

………え?
帰ろうと廊下を歩いていると担任に呼び止められてしまった。
それだけならまだしも、花巻にプリントを渡してほしいということだった。

断るにも断れず体育館へと向かう。
バレー部はどこで練習していたっけ?

フラフラとバレー部を探しながら歩き回っていると、岩泉を見つけた。いや、捕まえた。

「岩泉ー!良いとこにいた!」

「あ?」

なぜ自分が呼ばれたか分からないという顔をする岩泉に近寄る。
岩泉とは去年同じクラスで席が近かった時もあったため比較的話したことがあるから話しかけやすい。
岩泉に頼んでしまおうと思い、事情を説明すると快く引き受けてくれた。

「あっ、ちょっと待ってて。5分!5分で良いから」

体育館側の自販機へと向かう。
帰宅途中で良かった。手元に財布がある。
岩泉へのお礼と花巻への激励と称したスポドリを購入して、岩泉の元に戻る。

「これ、岩泉と花巻の分。よかったら」

「ありがとな。プリントも渡しとく」

「お願いしまーす」

「おう」

岩泉にプリントとスポドリを渡して、今度こそちゃんと帰路に着く。

とりあえず、花巻は私にはまだ分からないということだけが今日の収穫らしい。

そうそうプリントの正体は今日の数学の小テスト。
見事に再試だったから、明日は彼の朝練は無さそうだ。ドンマイ。

明日は
お話しできますように

次の日学校に行くと、
「ありがとな。」と書かれたメモと
私がいつも飲んでいるジュースが机の上に。

titled by 「星屑の泪」様