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「ねえ、今年の夏は色んなことがたくさんあったね」
そう口を開くのは烏野高校3年男子バレー部マネージャーであるなまえだ。
今は同じく3年男子バレー部のマネージャーである清水潔子ととりこんだばかりのタオルを畳んでいる最中だ。
もちろん、1年谷地仁花も一緒に。
「そうね。谷地さんも入ってくれたし」
「ふぁい!」
「私たち3年生にとって高校生活最後の夏が終わっちゃうね」
初めて梟谷グループでの合宿に参加して、初合宿お泊まり。
部員のみんなは他校の皆の良いところを沢山吸収していた。
うまく吸収し、成長した烏は春高1次予選を無事突破した。
そして、夏が終わるということは春高2次予選がもうすぐ始まるということだ。
「私たちにとって泣いても笑っても最後の大会。全国に行って優勝しても最後なんだよね」
「なまえしんみりしないの。谷地さん涙目になってる」
潔子の言葉に驚き谷地ちゃんの方を見ると、真っ白なタオルを抱きしめ目に涙を浮かべていた。
「谷地ちゃんごめんね!泣かないで!」
「卒業なんて無ければいいのにって思っちゃいました。村人Bだった私に戦う機会をくれたのは先輩がたで、バレー部の皆で。勝っても負けても終わりだなんて嫌です。もっと先輩と部活がしたい…!」
「私もだよ谷地ちゃん。今更になって沢山後悔することがあるんだよ。バレー部の皆に気持ちよく部活をさせてあげれたかなって。後輩たちにとっていい先輩だったかなって」
「なまえ、谷地さん…」
ポロポロと溢れ出す涙を私と谷地ちゃんは止められずにいた。
潔子も寂しくなったみたいで目に少しだけ涙をためていた。
「ぶへっ」
「へぶっ」
「…っ!」
気がつくと目の前…というか視界には綺麗にしたばかりのタオルしか入っていない。
「いつもより遅いと思ったら、なーにしんみりしてんだお前ら」
「清水までしんみりしてるとかどんだけ寂しい話してたんだよ」
「さ、3人とも大丈夫?」
私たちの顔にタオルを押し付けていたのは3年生だった。
「澤村…いや、春高が勝っても負けても最後の大会なんだなって思うと本当に寂しくなってさ」
マネージャー3人がタオルを顔から退けて3年生3人と視線を交える。
この人たちはこんなにも頼もしい顔をしていたのか。
「最後だから、後悔しないように頑張るんだよ。春高に連れて行くから」
「期待してる」
「んじゃ、俺ら行くべ。涙引っ込めてからこっちこいよ」
なんやかんやで澤村や菅原ばかり喋っていたけれど、東峰もちゃんと心配してくれているのは伝わっている。でも、おどおどしているからこっちが心配になるくらいだ。
「烏野高校バレー部にしんみりは似合わないわね」
「そうだね!」
「そう…ですね!」
「じゃ、とっととタオル畳んで、皆のところ行こうか!」
並んでいる3人の背中は2年前にみた時より、ひと回りもふた回りも大きく見えて、バレー部はこの背中に支えられていたんだなぁと思ったりもした。
頼もしい背中この背中が丸まらないよう頑張ろう。
ピンっと伸びたまま引退しようね