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私は今第二体育館の扉の前にいる。
中からは元気な男子バレー部の掛け声が聞こえている。
扉を開けようにも部外者の私が開けていいものか不安になる。
一言だけ文句を言うならば、寒い!!
勝手に彼氏である龍を待っているんだけれど、寒すぎる。北風が私をいじめてくるのだ。
さっき自動販売機で買ったペットボトルのお茶を頬に当てながら、扉の前に座り込む。
今日は龍の誕生日だから、一緒に帰りながらお祝いしたい、という私の我儘で勝手に外で待っているのだからこの寒さへの文句は誰にもぶつけられない。
そーいや、龍と会話することなんて、ご飯のこととか潔子先輩の美しさについてだとかだ。
潔子先輩の美しさは本当に憧れる。潔子さん潔子さん言ってる龍も好きだからきっと私は龍に溺れているのだろう。
ついさっきまで綺麗なオレンジのグラデーションだったのに、星が綺麗な見えるようになっていた。学校が終わり、用事も終わり、何時間ここにいたのだろう。暖かかったはずの飲み物もすっかり冷たくなっていた。
マフラーしてるけど寒いなぁ。
ガラガラッと建て付けが悪そうな音をたてて後ろの扉が開いたとともに「なまえ?!」という言葉が上から降ってきた。
「あ、龍。一緒に帰ろうと思って」
「お前どんくらい待ってたんだよ!中入ってくればよかったのに…」
「んーと、1時間くらいかな?だって部外者だし、私の我儘で勝手に待ってたから入りにくくてさ」
「………ったく!ちょっと待ってろすぐ着替えてくるから!!」
そう言って全速力で部室の方へと走っていく龍。
龍が帰ってきたらプレゼントを渡せるようにしようと思い鞄の中をガサゴソしていると上から西谷の声が降ってきた。
「それ、龍へのプレゼントか?」
「西谷か!うんそうだよ」
「バレー部では部活前に龍はお祝いしたからちゃんと持って帰ってな」
「なまえ!帰るぞー」
西谷の言い方に笑いを堪えていると急いで着替えてきたらしい龍が目の前に立っていた。
「あ、うん!西谷またね!」
「おう!」
▽▲▽「ほんと体育館の中入って待ってればいいものをよぉ…」
「いや、だって部外者だし…」
マフラーに顔を埋めて龍への反抗を少しだけしてみる。
そーいや、お雛様を出したのはいつが最後だったかな、とか考える。
片付けるのが遅れちゃうと嫁に行き遅れるとか結構ひどいと思う。
「ところで、何で急に一緒に帰ろうと待ってたんだよ」
「あ、そうだ、これ!」
鞄の中から龍のためにたくさん悩んで選んだプレゼントを渡す。
一瞬、なんだこれ、みたいな顔をしたが部活前の出来事を思い出したのか"誕生日プレゼント?!"と目をキラキラとさせて私に詰め寄ってきた。
「龍!近い…!」
「あ、わりぃ!開けていいか?」
「どーぞ」
バリバリと丁寧の"て"の字もない開け方でラッピングを開けていく。
ひな祭り生まれなのにまったく正反対じゃん。おもしろいなぁ
龍が開けたその中には、青色と白色のマフラー。
まだ肌寒い3月でも手放せないものだから選んだのだ。
「龍!お誕生日おめでとう!」
「おお!ありがとな」
そう笑った龍の笑顔は可愛くて可愛くて、ひな祭り生まれでもなんだか納得のいくものだった。
君に似合う誕生日なんだかんだで可愛いんだよね。