センチメンタルエイド
幸村くんは予想した通り、生徒たちから大人気の先生になった。
女の子からの人気がかなり高い。テニス部に所属している男の子もちらほらといるので、彼に色んな話を聞いたりしている。
授業も「わかりやすい」とみんな言っている。

「先生って彼氏いるの〜?」

「え?いないよ?」

「好きな人は?」

「ん〜、いないかなぁ。先生って中学校も高校も女子校だったから好きな人できたの小学校が最後だよ」

「ほんとー?!びっくり!」

「そういう桜ちゃんこそどうなの?好きな人いるの?」

桜ちゃんは中学2年生で、こういう恋バナが大好きなイマドキの女の子だ。
この教室で恋バナをしているグループがいたら必ず中心に桜ちゃんがいる。

幸村くんが来て以来彼女たちのターゲットは柳くんから幸村くんに早変わりした。
「幸村先生彼女いるの?」「好きな人は?」「気になる人は?」とひたすら質問攻めをしている。

よくもまあ会うたび会うたび違う質問ができるなぁと思うし、1週間に3回は少なからず「彼女できた?」と聞いている。
そんな早くできるわけないだろ!と突っ込もうと思ったけど、彼のあの顔とあの性格じゃすぐに彼女ができてしまっても不思議じゃない。

スタッフルームに帰ってくる幸村くんは少しだけ困ったような顔をしているけれど、生徒から慕われて嬉しそうな顔もしている。

「幸村くんが来る前は柳くんが彼女たちのターゲットだったよね」

「そうだな、助かったぞ精市」

「……丸井に色んなことを押し付けられてたジャッカルの気持ちがわかった気がするよ」

「そういや丸井と仁王がこの間遊びに来てたんだろう?」

「そうそう丸井が新しいスイーツ考えてるから試食してくれってさ」

「あいつらは専門学校だから今年卒業か」

なんだか居づらい雰囲気の話を始められてしまった。
中高の部活の仲間の話らしい。2人は昔の話をよく突然し始める。
話の流れ的に丸井くんとやらが製菓系の専門学校に通っているんだろう。
彼らの話は聞いていいのかダメなのかわからないので精神的に耳を塞いで報告書に文字を書いていく。

学校が違ったとしてもこうやって会ったり、共通の友人同士の会話で話題にされたりするのは本当に良いことだと思う。
たまに連絡を取っているとはいえ、向こうの友人たちは私のこと覚えてくれてるんだろうか。

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