星はいつでも差し出されていた
「そろそろ答えをもらいたいんだけど、どうかな?」

「えっと〜…」

講義終わりに幸村くんに捕まった。
大講義室内で、だ。
同じ授業を取っていたことにびっくりしたし、友人が「あとはお若い2人で〜」なんて言いながら去って行ったことにもびっくりしている。
大講義室ということもあってかなり人も多い。
そんな中で声をかけられて戸惑わない人がいるだろうか、いやいない。

つかまれた右手首が少しだけあつい。

講義室内では次の授業で使用されるし、人が多いしで、さすがに話ができないので人が少ない大学内の中庭に移動する。
この芝生広場を見たときは「理想の大学!」と感動したことを覚えている。だってドラマとかでよく見るじゃないですか。

「結構真面目に考えたんやけど、幸村くんのことを恋愛感情で好きって言われへん」

人としてはとっても素敵な人だと思う。違う学校に進学した友達が遊びに来るくらいには幸村くんは素敵な人だと思う。
でも、それは多分「憧れの好き」であって、「恋愛感情の好き」じゃない。

そう伝えると、数秒目を伏せて私の目をまっすぐに見つめてきた。

「そう言われると蓮二から言われてたのに、いざ言われるとさすがにしんどいね」

「柳くんはほんま何者なん」

「蓮二はデータが命だからね。あと、みょうじさん関西弁でてるよ」

ふんわりと笑って、私の両手を私の手より少し大きい幸村くんの手が包んだ。
全身の神経が手に集まったのかと思うくらいかなり手に集中させてしまう。

「関西弁のほうが私の素直な気持ちを伝えられると思ったら思わずね」

「向き合ってくれてありがとう。でもね、俺は君のことを諦められない。松本さんからみょうじさんは俺のことを好きになってるって聞いたし」

まさか友人が幸村くん側の人間だとは思わなかったぞ。
私が散々悩んでたのは本当に幸村くんの手のひらの上で踊らされていただけなのか!!
でもなぜか怒りは湧いてこなくて、こうやって私が告白を断っても「諦められない」と幸村くんに言われて本当に私のことを好きでいてくれているんだなと思ってしまった。

「俺はみょうじさんが好きだよ。惚れさせてみせるから俺と付き合ってみませんか」

私はこの人と出会った時からこの結末を用意されていたんじゃないだろうか。
だって、こんなにも幸村くんが私が受け入れると思って自信満々な顔でいるんだもの。

「よろしく、お願いします」

もう少しだけ、幸村くんの手のひらの上で踊らされてみることにした。

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