大人仕掛けの神様
幸村くんに告白されて2週間ほどが経った。
さすがにシフトがかぶってすれ違うことだってあったし、話したこともあったけれど告白の件についてどちらからも切り出すことがなくて返事すらしていない。
答えもなにも決まってないから、してくれと急かされても困るのだが。

「まだ返事してないの?」

「人としては好きだけど、恋愛としてはわかんない。あんなイケメン好きになっていいのかなってなる」

「好きになっちゃダメだって言い始めた時点でそれはもう好きなんだから諦めな」

「う〜〜ん」

幸村くんを見るとドキドキするのは事実だし、話すのも緊張するのも事実だ。でもそれは、私に異性に対する耐性がないからだろうし。
柳くんに対しても未だに話しかけるの少し緊張するんだもん。

告白されてから意識せずにはいられなくなったけれどそれは告白されたからであって恋愛感情から来るようなものじゃないと思う。

「贅沢な悩みだから出来る限り悩むのも面白そうだけどね」

「他人事だと思って〜!」

「他人事ですから」

なんていいながら友人はブスリと一口大に切ったハンバーグにフォークを刺して口に運ぶ。
今日はバイトがお休みなので友人と学食で夕食を食べている。
週替わりメニューが美味しいと評判の学食なのでこうやってたまに友人と食べに来たりする。

「まあそうやって告白して、意識させてっていう作戦のような気もする」

「柳くんもそれ言ってた」

「やりかねないわ〜」

私たちの話題はもっぱら幸村くん関連にすり替わってしまって以前はなにを話していたのか少しわからなくなってしまっている自分もいる。
これも彼の作戦なのか?と思うと手のひらの上で踊らされている感しかない。
恋愛でこんなに戸惑う日が来るなんて数ヶ月前には思ってもいなかった。

|