君の声のち、ブラックアウト
「先生と幸村先生付き合ってるって本当〜?」

「ゴホッ…え?付き合ってへんよ?」

給湯室で先輩に淹れてもらった紅茶を飲んでいると部活終わりにそのまま来たらしい桜ちゃんが私に突撃してきた。

「嘘だー!だって、高城がこの前2人が一緒に歩いてる姿見たって言ってた!」

………なるほど。「一緒に歩く=付き合ってる」ということなのか。
小・中学生って一緒に帰ったり、ちょっと話しただけで付き合ってるだなんだって言うよね。可愛い。

「幸村先生のお家がこっち方面なんだって。だから大学からここまで一緒に来てもらってただけだよ」

「幸村先生とみょうじ先生お似合いなのに!」

「いやいやいやいや、どこが?」

「幸村先生って少し厳しいから、優しいみょうじ先生とぴったりだと思うの」

「一緒に授業したらって話だよねそれは…」

キラキラとした目でそんなことを言われるけれど、あの幸村くんとお似合いだとかありえない。
彼女が言う通り授業方法は確かにぴったりだとは思うけれどさ。

「あ、ほらチャイム鳴るよ。次柳先生でしょ?席座ってないと怒られるよ?」

「ほんとだ!またあとでね先生!」

ブンブンと手を振ってブースに入っていく桜ちゃんを見送って、私はスタッフルームへと戻る。
この時間は授業が入ってないので、事務作業。とは言っても、特にすることはないらしく次の授業で高校生を受け持つので、それの準備をすることにした。
大学に入ってからは高校生の時のような英語をやる機会がないのでちょっと自信がなくなってくる。

「お疲れ様でーす」

「あ、お疲れ様です」

「この時間は事務?」

「うん、次の時間は高校生の子受け持つから予習〜。私が苦手だった範囲だから大変…」

サークル帰りのような格好をした幸村くんがスタッフルームに入ってきた。

「そういやさっき、高本さんに『幸村先生とみょうじ先生なんで付き合ってないの?!』って言われたよ」

「なんか厳しい人と優しい人が一緒に授業したら丁度いいのにねっていう意味らしいよ…」

高本というのは桜ちゃんのことだ。
柳くんの授業だというのに教室に入ってきた幸村くんに気がついたのがすごいと思う。
彼女にはイケメンセンサーでもついてるんじゃないだろうか。

「みょうじさんは彼氏とかいるの?」

「いたら桜ちゃんにそんなこと言われないよ」

「そっか……、じゃあ俺が立候補してもいいかな?」

「……………………え。」

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