元ネタはコチラにあります。

「みょうじ〜!こっち!」

「ごめんなさい、私が最後ですよね?」

「いや、跡部と樺地が最後」

「え〜、珍しい!」

「大学の補講が入ったんだってよ。先に店行ってろって連絡きたから行こうぜ」

「あ、はい!」

予約をしてくれているお店への道をぞろぞろと歩く、元氷帝レギュラー陣+滝先輩。
こんなイケメンの中に普通どころかそれ未満の女子が紛れててごめんなさい、なんて心の中で呟きながら後ろからついていく。

こうやって当時のメンバーと集まれるのは久々だ。
同級生の日吉や鳳とかとはよく集まってたりしたけれど、先輩たちも含めて集まるのは久しぶりだ。樺地くんはいつも跡部先輩のお隣にいて、私たちの集まりにもなかなか参加できないから、同級生なのに会うのは久しぶり。

お店に入ると、個室に通されて各自飲み物を頼んでいく。

昔ワイワイ集まるときはファミレスでドリンクバーだったり、跡部先輩のお家だったりしたのに、今では居酒屋でお酒を頼んでたりするのを見ると大人になってしまったんだなぁと切なくなる。

「じゃあ、跡部と樺地いねぇけど、とりあえずかんぱーい!」

宍戸先輩がそう声かけをして、グラスをコツンコツンとぶつけ合い、お酒を一口飲み込む。
お酒は強くないから、控えめに。

▽▲▽

「でな、」

あれから30分ほどして合流した跡部先輩と樺地くんを交えてそれぞれの大学の話に花を咲かせている。
内部組と外部組でやっぱり分かれてしまったから、話のタネはたくさんあるらしくどんどん話が進んでいく。
日吉は少し疲れたらしく、隅にいた私の隣にストンと座ってきた。

「いいの?跡部先輩の話聞かなくて」

「いい。今はお前の方が心配だ」

「……は?」

「いつも俺らと飲むときはもう少し明るいのに、今日は何かおかしい」

「…うーん、なんて言ったらいいんだろう、メンバーは数年前と全く変わらないのにお酒飲んだりしてて、大人になっちゃったんだなぁって思ってたの。」

「まあ、大人になってなかったら怖いけどな」

「そこ突っ込まないで?私としては一大事なんだからさ」

カラン、とグラスの中の氷が溶ける音がする。

「なんだか、私だけ、取り残されてるような、気がして、」

「ちょ、えっ」

ポロポロと溢れ出てくる涙を抑えきれなくて、目からこぼれていく。
歪んだ視界に日吉が焦っている顔が確認できる。少し…いや、かなり貴重だ。

「皆、ちゃんと大人になってる、のに、私だけ、子どもだな、って」

「あーーー!日吉がなまえちゃん泣かしてるC!」

芥川先輩の一言でワイワイと騒いでいた先輩たちの視線が一気に集まってくる。
そんな見ないでくれ!

「だいじょ、ぶです、すみません」

「大丈夫じゃないやろ、日吉に何されたん?」

「みょうじは酒が入ると泣き上戸になるんだな」

「俺らと飲んだときはそんなことなかったんですけどね」

「2年生たちはよく飲みに行ってるんだ…、ふーん、やるねぇ」

今まで部活では泣いたことがなかったため、私の涙が珍しいのかかなり大事件となりかけていたところで日吉が助け舟を出してくれた。

「皆さんが大人になってるのに、自分だけ子どもなのが嫌だそうです」

「「「「はあ??」」」」

くだらない理由ですみませんね!結構悩んでたりするんですよ!

「みょうじ、」

「跡部先輩」

「お前は十分大人だろ。むしろ、昔から十分大人だった。俺らが試合で負けた時も泣かずに励ましてくれた。辛い仕事だって投げ出さずにやってくれていた。イジメにあった時だって自分でなんとかしようとしていただろう?お前は大人すぎたんだよ。」

「それは、私が試合したわけじゃなくて、ただのマネージャーが選手に迷惑をかけるわけにはいかなかったからで」

「その考えが大人だって言ってんだよ。お前は昔から甘えるのが苦手だったもんな、少しは子どもらしくなってもいいと思ってたんだ」

「せやなぁ、無理矢理大人にならなくてもええと思うわ」

「子供心を忘れる方が切ないですしね」

「昔の仲間と集まったら自然とその当時に戻るのは当然だよなぁ?なあ、樺地」

「ウス」

「あいつらもああ言ってるし、気にしなくていいと思うぜ?」

ああ、なんてこの人たちは優しくて暖かくて素敵な人たちなんだろう。
この人たちの"仲間"でいられて私は幸せだ。
無理に大人にならなくていいし、子供心を忘れなくてもいいんだ。

「はい、ありがとう、ございます」

「よし、じゃあとりあえず泣き止もうな。何かあれば俺らが助けてやるから、な?」

こんなに素敵な人たちと部活ができて、今もこうやって集まれるなんて私はどれだけ恵まれてるんだろう。
きっと、このままで、私らしく頑張っていけば大丈夫だ。
何かあれば彼らが今みたいに手を差し伸べてくれる。


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