7時過ぎに門に着くように私服で学校に向かっているとちょくちょく同じクラスの子達や去年同じクラスだった子とすれ違う。
すれ違うたびにみごとに声をかけてくれるから私はものすごく心配してもらっているのかもしれない。
呑気にアプリゲームをしていると、部室棟のほうからテニス部2年生が歩いてきた。
あんだけ集まってるの見るの初めてだなぁ。
真田は去年同じクラスだったけどあんまり話さなかったし。
幸村にひらひらと手を振ると、ぱあっと笑顔を見せて小走りでこっちに来る。ワンコみたいだな……。
「みょうじさん、待たせちゃった?」
「ううん、今来たところ」
「よかった。これ、ありがとう」
カバンの中からタッパーを取り出す幸村を見て思ったけどやっぱり幸村にタッパーは似合わない…。
「どういたしまして!」
「また作ってきてくれたら嬉しいな」
「もちろん。2時間目以降に保健室に取りに来てくれたら大体あるからぜひ!あ、でも水曜日はお茶会お休みデーだからそれ以外で」
「ふふっ、わかった。ありがとう」
「ところで。2人はどんな関係なんだ?」
「蓮二、」
幸村が小走りでこっちに来たため、置いていかれていた2年生組が今やっと到着した。到着したって言い方はおかしいかな?
1番最初に声をかけてきたのは"参謀"やら"達人"と呼ばれる柳蓮二。
この人に私の情報がどこまで知られているのかは謎だけど、保健室登校だし
そこまでは知られていない…よね?
その隣には"皇帝"と呼ばれる真田弦一郎。あと後ろには丸井ブン太と仁王雅治がいた。柳生とジャッカルがいないのを見ると違和感を感じる。
丸井とジャッカルはセットだと思ってたんだけど。
「幸村くんとはクラスメイトだよ。まあ、私が教室になかなか行かないから顔をあわせる機会は少ないけど」
「ならなぜそんな精市がみょうじにタッパーを渡しているのだ?」
「今日のクラスマッチのお昼休みの時にお菓子焼いてきたからそれをおすそ分けしたの。部活後に食べてねって」
「ほお…」
「幸村くんが部活終わりに嬉しそうに食べてたクッキーお前が焼いたのか?!?!」
お菓子という単語に反応して後ろから飛び出てきた丸井に驚いて少し後ずさりしてしまう。
なんというか、さすがとしか言いようがない。
「そうだよ」
「いいなぁ!今度俺にもくれよ!」
「うん、幸村くんと一緒に保健室に取りに来てもらえたら。水曜日以外でね」
「ラッキー!」
「じゃあ、また明日ね」
タッパーを片手に持って、ひらひらと手を振って家に向かって歩き始める。
しかし、柳は私のことをどこまで知ってるんだろう。今度機会があれば聞いてみよう。