お昼ご飯も珍しく教室で食べている。
教室で食べようね!と事前に友人から念をおされていたため、おやつにみんなでつまめるクッキーを焼いてきた。
「今日はクッキーだよ」
「やったー!チョコチップもあるー!」
「なまえってほんと女子力高いよね、羨ましい」
「材料混ぜて焼いちゃえばできるから簡単だよ」
グループのみんなのお弁当が終わる頃にカバンの中からタッパーを取り出して机の上に置く。
今日のクッキーはプレーン、チョコチップ、紅茶の3種類。
4人で食べるには少し多いから、隣でお弁当食べてる女の子たちにもおすそ分けしていたら、遠くでお弁当を食べていた男子に少し掻っ攫われていく。
育ち盛りの男の子は素晴らしい食欲ですこと。
ワイワイと軽いお菓子パーティーが行われていると、お弁当は部活の人と食べるらしい幸村が戻ってきた。
「はい、これ良かったら」
何が何だかわかってない彼にクッキーが入ったタッパーを差し出す。
「あ、なるほど。今日はクッキーなんだね」
「一応皆には評判だから味はいいと思うよ」
「この前のケーキも美味しかったからそこは心配してないよ」
笑いながら一つ手にとって口に運ぶ。
こんな顔して五感を奪うテニスをするから人って本当に見かけによらない。
「なまえちゃーん!紅茶のクッキーちょうだい!」
「あ、うん!自由にとっていいよ」
友人が持っているチョコチップのクッキーは売り切れらしく次は紅茶のクッキーらしい。
美味しそうに食べてくれる皆のことを見るのはとても好きだ。
「みょうじさんっておかし作り本当に上手だよね、クッキーもガトーショコラも美味しかったし」
「私の実家って埼玉で、立海に通うために一人暮らししてるから自然に料理できるようになっちゃったのかな」
「そっか…習うより慣れよってことかな?」
「まあそんな感じ。もう一つどうぞ」
「ありがとう」
プレーンのクッキーを差し出して食べるように促す。
ここでもし丸井がでてきたら全部食べられるんだろうなぁ。
彼を学校で見かけたのは2回ほどしかないからありえないだろうけど。
そろそろ暑くなってきたから、ゼリーとか作ろうかなぁ。
「みょうじさん」
「ん?」
友人の方に顔を向けながら今後のお菓子について考えていたら、また幸村に話しかけられた。
「この残りのクッキーもらってもいいかな?部活終わりに食べたいんだけど」
おお、夢小説でよく見たやつ!
どうせ丸井に勝手に食べられるんだろうなぁとか思うけど、断る理由もないのでタッパーに蓋をして差し出す。
「うん、いいよ。部活何時頃終わりそう?」
「え?」
「私帰宅部だから、部活終わる頃にタッパー受け取りに来るね。家近いし」
「明日洗って持ってくるよ?」
「大丈夫、元々洗う予定だったんだから気にしないで」
「そう…?今日は7時に終わる予定だよ」
「じゃあ、そのくらいに門のところで待ってるね」