そんな幸村のつぶやきを聞いて深呼吸をする。
このタイミングじゃないともう話せない気がする。
「皆に大事な話があるの。話すタイミングは今じゃないってわかってるんだけど、今を逃したら2度と言えない気がするから話をさせて欲しい。」
「みょうじ」
柳が私の名前を呼んで話をさえぎろうとするけれど、私は話すことをやめない。
ここでやめてしまうことはもうできない。
「柳と仁王、あと幸村くんには不可効力でバレちゃったんだけど、私は、「みょうじ!」
「大丈夫だよ柳。」
なんのことだ?とザワザワするレギュラー陣。
赤也に至ってはキャパオーバーだとでも言いたそうな顔をしている。
少ししか話してないんだけどなぁ?
このツライ時に話をするのはとっても空気を読んでいないと言われてしまいそうだけれど、ここじゃないと言えないと思ってしまった。
私にも真剣な話をさせてほしい。
「私はここの世界とはまた別の平行世界…パラレルワールドからきた人間です。何言ってんのかわかんないだろうけど何も言わず信じてほしい。私は本当はここに存在するはずのない人間なの」
「以前の世界の私についてはシークレットで突き通させてもらうね。で、私はもうすぐ消えるの。」
みんなに質問の隙を与えずにツラツラと言葉を並べる。
質問されてしまったり、話を止められるともう言えなくなりそうだった。
「だから、あと数ヶ月…いや全国大会決勝の日まで仲良くしてくれないかな。」
「それは、決勝の日に消える…ということでいいのか?」
「それも内緒。たぶん混乱してる子が殆ど思うんだけど、みんなの大会が終わったら私は転校するって思ってくれてたらいいから」
あからさまに頭上にはてなマークを浮かべている丸井と赤也と真田にそう笑いかける。
初めから転校すると説明すればよかったなぁと今更伝え方を間違えたことを自覚する。
「みょうじは転校するってことでいいんだな?」
「真田くんの考え方で正解です」
「転校したらもう会えないんすか?」
「うん、会えない」
「…転校しなくていい方法はあるんだろう?」
「私もね迷い始めちゃったの。みんなが必死にテニスしてる姿みてたらずっとこの位置で見ていたくなった。でも、許されることじゃないんだよ」
「なんでだよ…俺、お前のお菓子好きだし、弟たちもお姉ちゃんまた連れてこいってうるさいんだよ」
「嬉しいなぁ」
「幸村くんが倒れた時に切原くんを慰めて立ち直らせてくれたのはあなたじゃないですか」
「話聞いただけだよ」
「毎日のように幸村のもとに通って幸村を支えててくれたじゃねーか」
「保健室登校だからやりたい放題だもん」
「みょうじ、お前は立海の全国優勝には欠かせない存在だ」
「真田くんにそんなこと言ってもらえると嬉しいなぁ」
「おまんがおらんとつまらん」
「からかう相手がいないからでしょ?」
「お前には聞きたいことがまだあるのだが」
「ほんっとデータ大好きだよね」
「みょうじさん、君はこの世界にいていい存在なんだよ?だから、俺たちの….俺のそばにいてくれないかい?」