外に出て何分経ったかわからないけれど、涙がやっと収まって落ち着いた頃に病室からひょっこりと仁王が顔を出して私を呼んだ。
もしかしたら泣き顔を見られてしまったかもしれない、恥ずかしいなぁ。
さっきより明るい表情をしていたので少しだけ安心した。

「我ら立海大付属は準優勝という結果だった」

「うん、」

「結果的には全国大会には行けるのだが、無敗を幸村に持って帰ることができなかった」

「うん、」

「全国ではもう負けない。全国優勝を成し遂げてみせる」

「……うん」

病室に入ると真田の口から結果を聞かせてくれた。
幸村の表情はまだ見えない。
いざこうやって本人の口から聞かされるととってもしんどいなぁ。
赤也も泣きそうな顔で立っている。
幸村が倒れたと聞いて駆けつけた病室で見た赤也の顔とそっくりだ。

「……応援してる」

「みょうじさん」

「なあに?」

幸村に名前を呼ばれて、歩を進めベッドに近寄る。
複雑そうな顔をした幸村がベッドに横になっていた。

「俺はもうテニスが出来るんだよね?」

「そのはずだよ」

「全国大会出られるんだよね」

「うん」

「全国大会優勝してみせるから、だから…」

消えないで、そう私にしか聞こえない声でつぶやいた。
私だって消えたくなんかないよ。
でも、存在してはいけない人間なんだからね。

「とりあえず…。幸村くん、おかえり」

「……ただいま」