「今日は幸村についてやってくれ」
「そのつもり。病院でみんなのこと待ってるから!頑張って!」
とうとう迎えた関東大会決勝。
病院に行く前に学校へ寄ってみんなに声をかける。
本音を言うとリョーマのテニスちょっと見たかったです。
結果がわかっているのに、たくさん頑張っている人に、頑張れって言うのはツライ。
でも、もしかしたら勝てるかもしれない、そう思ってしまうんだ。
もしかしたら三連覇して駆けつけてくれるんじゃないかって思っちゃうんだ。
何度も原作を読んでもしかしたら次のページから展開が変わってるのかもしれないと思っていた日々を思い出した。
何度も劇場に足を運んでいて、どんどん強くなる彼らを見守っていて、今日こそは勝てるかもしれないと思っていた日々を思い出した。
「幸村を任せた」
「任された。」
そんな会話をしたあとに病院に着くと、もう手術室へと向かう幸村がいたので、「待ってるから」とだけ言って見送り、廊下の椅子に座る。
ちゃんと帰ってきてくれるよね。
▽▲▽
幸村が手術室から出てきて少しした後にレギュラー陣が病室に入ってきた。
幸村はまだ麻酔が切れていないので目を覚ましていない。
手術はもちろん成功した。目を覚まさないってことはないはずだ。
きっと。
「……お疲れ様」
「みょうじも幸村についていてくれて感謝する。」
「ううん。あ、麻酔がもうそろそろ切れるって先生言ってたから、私は外にいるね。結果は幸村くんに1番に聞かせてあげて」
みんなの空気が重い。
ああ、ダメだったんだな、私が知ってる結末と同じになってしまったんだ。
私が知ってる結末にならないことなんて無いに等しかったというのにね。
直接彼らを見て、彼らの練習風景を見てもしかしたらと思ってしまったんだ。
私が結果を聞くのは幸村が目覚めて、彼らの口から幸村にきちんと結果が告げられた後でいい。
そう思って病室を出てすぐのベンチに座って待つことにした。
勝って、無敗で全国大会に行って欲しかったなぁ。
「…………っ、……」
ポロポロと流れてくる涙を必死に抑える。
私が戦ったわけじゃない、私がテニスをしたわけじゃない、泣いちゃだめなんだ。
笑って「お疲れ様」ってもう一度言ってあげなきゃ。
また赤也に頼られたら、抱きしめて落ち着いた声でお疲れ様って言わなきゃ。
幸村にも「おかえり」って言わなきゃ。
彼らに出会って私は変われたから。
私はもう弱くないよ。