「みょうじ先輩〜〜!」

「なに、切原くんどうしたの」

「英語教えてください!!」

放課後になりそろそろ帰ろうかと友人たちと話をしていたら、教室のドアが豪快に開けられて、ふわふわの頭が突進してきた。

部活はどうした部活は。
来月からはもう関東大会が始まるじゃないか。
なぜだろうと考え込んでいると、日々の予定を書いている黒板が目に入る。
でかでかと"本日よりテスト期間!"と書かれていた。
なるほど、どうりで学校が静かなわけだ。

テスト期間は許可を得た部活以外は活動を停止しなければならない。
学生の本分は勉学だと突きつけられてるようだと去年かそこらへんに同じクラスだった男子が叫んでいた。

とはいえ関東大会を来月に控えているテニス部は学校から活動の許可くらいおりそうなんだけど…?

「切原くん、部活は?」

「…テストで赤点取る方が一大事だって副部長が…」

「ああ…。真田くんなら言いそうだね」

「それで、柳先輩からみょうじ先輩が英語が得意だって聞いたんで!」

ニコーッと笑う赤也。
これは断れるわけないでしょ…。
赤点とって補習になって練習に参加できないってなったら笑えない。
きちんと全国大会に行ってもらわなければ。

友人たちには先に帰ってもらって私の教室で勉強することにした。
図書室でも良いと思ったんだけど赤也には合わないだろう。
勉強を教えてくれと言いに来たくせに、一切勉強道具を手にしていなかったので、とりあえず勉強道具を取ってくるように指示をした。

▽▲▽

「……で、こうなるの。じゃあmakeの過去形は?」

「えーっと…?」

「madeね。不規則変化動詞だからぜっったいに覚えてね」

酷い酷いと聞いてはいたもののここまでとは…。
並べ替えの問題ですら文章が作れない。主語の後ろには動詞がくるよと伝えてもダメ。

例えば"私はケンです。"という文章を日本語の語順で書いてしまって"I Ken am."になったりする。
国語が得意だと言ってたからきっと日本語脳のまんまなんだよね…。
単語とかもあんまり覚えられていないし、単語帳とお友達になってもらうしかダメだなこれは。

しかし一体この子今までどうやって切り抜けてきたんだろう。

「切原くんさ、今までのテストどうしてたの?」

「柳先輩とか幸村部長とかがスパルタで…思い出すだけで怖いっす!!それに比べてみょうじ先輩は優しいしわかりやすいんで好きです!」

「スパルタか…怖そうだね。せめて平均近くは取れるように頑張ろうか!もうひと頑張りしたらジュース飲もうね、おごってあげる」

「やりぃ!」