「だから、俺が中学生のままだとみょうじさんには恋愛対象として見てもらえないじゃないか」

「だって、中学生と大学生だよ?犯罪」

「俺が20歳になったら、みょうじさんはまだ26歳だろ?」

「そうですけど」

「だったら、はやく大人になってみょうじさんに男として見てもらいたい」

少し切なげな目をしてそんなことを言うのは反則だと思うの。

幸村を恋愛対象として見ていないと言えば嘘…になるんだと気がついたのは幸村が倒れてからだ。
毎日学校で顔を合わせていて話しかけてくれていた人が突然いなくなって寂しくなってから気がついた。
典型的なやつである。

「でも、私は消えるから」

「なんで…」

「私は元々ここの人じゃないでしょ、その時の感情で決めちゃダメなことなのさすがに幸村くんもわかるでしょ?」

そういうと納得いったのかいってないのかよくわからない顔をして黙り込んでしまった。
中学生の子にこんな大人の考えを押し付けてしまって良いものなのだろうか。

「失礼する」

2人の間のなんとも言えない空気にコンコンとノックの音が響き渡る。
この声は真田か。

どうぞ、と幸村が言ったのを確認してドアが開けられるとぞろぞろとレギュラー陣が入ってきた。
今日は早めに部活が終わったんだね。

今日みたいに部活が早めに終わった日は来れる人だけ集まって幸村のお見舞いに来ている。
私はほぼ毎日いるからよく鉢合わせするんだよね。
今日は丸井がいないみたいだ。弟くんたちのお迎えかな?

「みょうじも来ていたのか」

「真田くんそれ毎回言うよね」

私だけ椅子に座っているのもすこし居心地が悪いのでみんなが来ると椅子から立ち上がるのが定番。

「っ!」

「みょうじ!」

今日もそうしようと思って、立ち上がったら立ちくらみが起きた。
倒れる前に柳に支えてもらって倒れずに済んだのだけど。

「座っていろ、昨日だって数学の時間に倒れたのだから」

「ごめんありがとう」

やっぱりご飯食べないのはいけないな…。でも、食欲はわかない。
おとなしく椅子に座るのだけど、みんなから心配してますと言わんばかりの目をされて申し訳なくなる。

「考え事してて寝不足なの、心配しないで」

「よければ相談に乗りますが…?」

「ありがとう。でも、丸井くんもいるときに。」

「「?」」

「あと、幸村くんが退院してから…かな」

チラリと幸村の方を伺うと、ふんわりと微笑んでくれてきっと私が言いたいことを把握してくれたんだなと思うと嬉しくなった。