あの後、幸村がみんなに「すまなかった」と謝ってからは赤也の顔に笑顔が戻った。
やっぱり赤也には笑顔が似合う。
テニス部のみんなと関わらないとファンクラブの人たちと約束をしたというのにまた関わってしまった。
またイジメか〜、なんてのんきに思うくらいにはこの空間が好きだ。
上履きはちゃんと毎日持って帰ることにしよう。
「ところで、みょうじさんピアス開けてたの?」
「うん、学校には透ピしていってるんだけど今日はすっかり忘れてて」
むっとした真田の顔が視界に入る。
そうでした、風紀委員だったね。
いつもの癖で普通のピアスをしていたのを忘れていた。
体はそのままきているので、向こうの世界で開けていたピアスをわざわざ塞ぐなんて勿体無いしね。
「明日からは気をつけるから見逃して風紀委員〜」
「まあ、目立たないですし…」
「柳生くんは話わかるよねほんと。ジャッカルくんの次に良心だわ」
「気をつけるなら、まあいいだろう」
「真田くんもありがとう、気をつけるね」
そろそろ新しいピアス欲しいなぁ…。
立海カラーの黄色のやつとかいいかも。
なんてね。もうすぐここからいなくなるのに馬鹿かな私。
そういや、蔵に連絡を取ったのはやっぱり幸村だったらしい。
蔵の電話には出ていたと報告すると、「くそっ、」と数人が声を漏らしたのを私は聞き逃さなかった。
「昨日、間違えて仁王の電話に出なかったら多分私まだ引きこもってた」
「ああ、あれは俺が電話かけるように言ったんだ。あの時間は白石がいつもかけていると聞いたものでな」
「柳のせいなの?!関西弁聞こえるって思って電話でたら訳のわからない方言聞こえて心臓止まるかと思ったんだからね…」
柳の差し金で昨日の電話があったことを知ってものすごくびっくりしたんだけど、少し騒ぎすぎたようで看護師さんに注意された。
気をつけます。
「じゃあ、私そろそろ帰るね。晩御飯作らなきゃだし」
「じゃあ、俺らも帰るか」
「みょうじさん、またね」
「バイバイ」
「またね」
「………またね」