先ほど友人に渡したお菓子は私の唯一と言っていい趣味のおかし作りの産物である。

保健室に来るときはお昼過ぎに先生とお茶会をするのでお茶菓子として持ち込んでいる。

今日はガトーショコラ。

紅茶を淹れてくれている先生を待っている間に、ガトーショコラを取り出してお皿に乗せる。
このお茶会が私の唯一の楽しみだったりする。

ガトーショコラを見つめながらその楽しみに思いを馳せていると、幸村が保健室に入ってきた。本日2回目である。

「あれ、また先生いない?」

「いるわよー?」

給湯室からひょこっと顔を出す先生。
めっちゃかわいい。

先生の居場所を確認した幸村は先生の元へと歩いていく。

「はい、紅茶はいったわよ〜」

「わーい!この匂い…ダージリンですか?」

「正解!なまえちゃんすっかり紅茶の名前覚えちゃったわね」

「先生が淹れる紅茶美味しいんだもん」

話が終わったのか、紅茶を持ってきてくれる。

「あ、そうだ、幸村くんも一緒にお茶する?担任の先生にはうまく言っといてあげるけど」

先生がサボりを推奨しないでください。

「いや、でも…」

サボることに抵抗があるのか、はたまた私に申し訳ないとでも思っているのか。彼に至っては両方だろう。

「先生には上手く言っといてあげるわよ??」

「みょうじさんが良いなら…」

「私は大丈夫だよ」

「よし、じゃあ決まりね。幸村くんは保健室に来た途端腹痛を起こして保健室で休んでた、で決まりかな?」

もう一つ追加で紅茶いれてくるわねーと言ってまた給湯室へと戻って行った。

幸村と2人残された私はどうすればいいのかわからないけど、とりあえず1人増えたので鞄の中からもう一つ追加でガトーショコラを取り出す。

「はい」

「ありがとう。サボってみょうじさんとお茶してるって真田にばれたら怒られちゃうな」

すこし戯けながら微笑む彼は、柔らかい顔をしている。こりゃファンクラブも出来ますね。

「わー!今日はガトーショコラなのね」

「はい、ちょっと頑張ってみたんです」

「え?これみょうじさんの手作り?」

「うん」

「へえ!すごいね!おいしい」

ガトーショコラを食べる手を止めないところを見るとお世辞だとは思えないので素直に喜んでおこう。

部活の話を聞いたり、教室でのみんなのことを聞いたりしていると授業の終了を知らせるチャイムが鳴ったので、お茶会はお開きになった。

保健室から出て行く時に「美味しかった。またね」と言葉を残していってくれた。

やっぱり彼は素敵だ。